2014年11月01日

自転車のイベントに「ブルベ」というものがある。
いわば自転車版のスタンプラリー(オリエンテーリング?)のことで、主催者が指定するチェックポイントをすべて通りながら所定の距離を走るというものである。
距離は短いものでは200キロ、長いものでは1000キロ超というスケールである。
ブルベは「オダックス」という団体が各地で開催している。オダックスの本部はフランスにあり、各地のオダックスはいわばフランチャイズ加盟店のようなもので、組織としてはそれぞれが独立して運営されている。
日本国内では一般社団法人オダックス・ジャパンが統括団体となり、その加盟メンバーである各地域のオダックスがブルベを運営している。とはいえ、運営団体とか組織というのはちょっと大げさで、オダックスはブルベ愛好者のサークルというほうがイメージに近い。

ブルベは順位やタイムを競うレースではなく「ランドネ」であるとされる。ランドネは小旅行というような意味である。
ただし、レースでないといっても相応の走行能力は必要であるし、準備・計画、ペース管理、トラブル対処能力が要求され、単なる気軽なサイクリングではない。
主催者はあらかじめコースを設定して公表するが現地で誘導スタッフがいるわけではなく、参加者は自らコースを調査しておかなければならない。パンクなどのトラブルへの対処や飲食物の調達も各自の自己責任において行う。
レースのように交通を閉鎖することはなく自動車が走っている公道で実施される。当然ながら交通ルールの遵守は必須である。
指定されたコースはすべて通らなければならないが、参加者が自らの判断でコースアウトしても構わない。コースアウトした地点まで戻ればブルベを継続することができる。
長距離のブルベになると日付けをまたぐこととなり、宿泊や仮眠のことも含めて参加者が各自で計画しておく必要がある。
チェックポイントには制限時間が設定されており、制限時間を超過するとイベントの記録上は完走扱いにならない。(公道なので自らの判断で走行し続けることは可能である)
チェックポイントといってもスタッフが待機しているわけではなく、コース上のコンビニエンスストアや売店が指定されているだけである。ブルベ参加者はそこで買い物をしてレシートをもらい、チェックポイント通過のエビデンスとして集めていく。
スタート時にチェックを受けたブルベカードに上述のエビデンスを添えてゴール地点で主催者に提出してチェックを受ける。このチェックを受けることによりめでたくブルベ完走者となる。
ブルべを主催する各地のオダックスは完走者から提出されたブルベカードをフランスのオダックス本部に送り、オダックス本部はブルベカードに認定印を押す。
「ブルベ」は「認定」という意味である。こうしてブルベ=認定の証しとなったカードは、参加者本人が忘れたころになって返送されてくる。

1年の間に200キロ、300キロ、400キロ、600キロのブルベを各距離1回以上完走して申請すると「シュペールランドヌール」、略してSRの称号をオダックスのフランス本部から授与される。すごい自転車乗りというような意味合いの称号である。
そのような称号であるから、SR認定者はもれなく周囲に自慢すべきである。
そしてこのSRに認定されると、ブルベの本場フランスで4年にいちど行われる1200キロ・制限時間90時間の「パリ‐ブレスト‐パリ」への参加資格を得ることとなる。
ただしSR認定者であってもパリ‐ブレスト‐パリに確実に参加できるわけではない。昨今は参加希望者が多数のためブルベ参加実績による選考をパスしなければならない。

パリ‐ブレスト‐パリは1891年に第1回が開催されている。ただし現在とは異なり1951年まではプロ選手によるサイクルロードレースとして開催されていた。
そして、パリ‐ブレスト‐パリに対抗するイベントとして1903年より開催されるようになったのがツール・ド・フランスである。こちらは現在もプロロードレースの最高峰である。

上の写真は昨年ブルベに参加した際の仕様。

私はふだんはスチールフレームの重量級ロードバイクを主力機としているが、このときはイベント用の軽量アルミロードバイクを使用した。
ブルベのルールにしたがってベルをつけている。(かっこわるいしベルを鳴らすのはかえって危険なので不本意であるが、ルールなので仕方ない)
フレームのトップチューブには補給食を入れるベントーボックスをつけ、降雨のなかでの山岳コースにあわせて軽量アルミホイールを選んだ。(カーボンホイールは雨天でのブレーキの効き具合に不安がある)
レースではないといっても、夜間の走行をできるだけ回避するために「さっさとゴールすること」が結局は安全確保や快適性につながる。そのためにはスピードを損なわない仕様にするべきである。ただしこのあたりは参加者ごとに哲学が異なるところ。