2006年07月01日

私はあと2カ月で65歳になります。年齢よりは若く見られますし、実際に元気です。仕事でもオフでもアクティブに生活しています。
ところで、最近、私があまり年寄りくさくならずに一定の若さを維持できているのは、私の周辺にいる老人たちが人並みはずれて元気なためではないか、と思うようになりました。

6月1日、私の尊敬する藤本さんという方の「米寿兼ゴルフ3000ラウンド記念」のお祝いゴルフコンペを行いました。
藤本さんはある住友系メーカーを常務を最後に早くにリタイアされた方ですが、今年88歳の誕生日を迎えるまで、実に3000回のラウンドを重ねられました。
80歳を越えてゴルフを楽しむ人はめったにいませんし、まして米寿の歳でなお月に4、5回もラウンドされるのは驚異的です。しかもスイングやコースでの足取りはかくしゃくたるもので、アフターゴルフの食欲も含めて若い者と対等の付き合いをされます。
このような人といっしょにいると、自分が年寄りなどと思う余地はなく、もちろん年齢を不成績の弁解に使うこともできません。
逆に、自分はまだ若い、藤本さんの歳までまだ20年以上もある、という安心感や自信がわいてきて、加齢に伴う弱気や消極的な気持ちを遠ざけてくれます。私が藤本さんに感謝している所以です。

私は毎冬約2週間スキーに出かけます。北海道に1回、海外に1回というペースがここ数年続いています。
同輩たちからその元気さを誉められたり、年寄りの冷や水とひやかされたりしていますが、私のスキー仲間というのが実はほとんど私より年上の「元気な老人たち」なのです。今年3月、カナダのバンフ、レイクルイーズに行きましたが、8人グループのうち私が最年少でした。
65歳以上はリフト券などで大幅なシニア優待があるのですが、レギュラー料金を支払ったのは私だけ、あとの7人は全員シニア料金でした。私は損をしたような、しかし得をしたような奇妙な気持になりました。
ところが、この7人(私も辛うじておいてけぼりを食わないようにして)、カナディアンロッキーの急斜面をスイスイと滑降するのですから立派なものです。
中でも、私の尊敬する西川さんは74歳の歯科医ですが、スピードに加えてひときわ美しいフォームで滑られるのはうらやましい限りです。ちなみに、この西川さんはゴルフもシングル級の腕前で、いまだに私が勝てない「元気な老人」の一人です。
このような元気な老人たちとスキーをしていると、若い自分(相対的にですが)が疲れたとか、やさしいゲレンデの方を滑りたいとか、そんな恥ずかしいことは言っておられません。そして否応なしに、自分が年寄りであるということを否定せざるを得ない心境になります。

私は「アンサンブル・コスモリバティ」という弦楽合奏団に所属し、そこでチェロを弾いています。
この合奏団は仕事をリタイアした男性と子育てを終えた女性を主力メンバーに1990年に設立され、16年の歴史があります。
この合奏団に所属している男性諸氏や一部の女性メンバーがまた「元気な老人たち」なのです。
今年、定期演奏会の連続出演記録が途切れたビオラ奏者のKさんは80歳を越えています。80歳に近い方も少なくありません。私など全体の中ではまだ若輩者に属します。
今回の演奏会ではモーツァルトの交響曲40番を演奏しました。特別にモーツァルトに思い入れがある私としては、年老いてなおモーツァルトを愛し続けるこの合奏団の人たちと感性を共有できることを幸福に思います。
そして、この人たちにあやかって、一日でも長く、聴力や感性を持続したいと思わないわけにはいきません。

このホームページに何回か随筆を書いて下さった森井さんは大学の法学部の先生(今は非常勤講師)で、来年80歳になられます。私も参加する「大阪企業法務研究会」の代表幹事を長年お願いしています。この方も私の尊敬する「元気な老人」の一人です。
法律関係の書籍の執筆を続けるかたわら、エッセイや水彩画、音楽等の趣味も素人の域を超えています。
法律家が集まって議論するときも、森井さんの勉強ぶり、準備ぶりはほかのメンバーの及ぶところではありません。記憶力や発想の柔軟性などに若さを感じます。
耳を発表者に向け、目は手元の資料を読むという特技があり(耳も目も健康そのものだということです)、報告者が途中でちぐはぐなことを言うと間髪を入れず鋭い指摘や質問がとんできます。
身体が健康であることに加えて、法律学や法律実務に対する情熱が深く、強いのだと思います。
私自身は80歳になって森井さんのような情熱を持ち続ける自信はまったくありませんが、森井さんと席を同じくして法律を論じる限り、気力や体力で森井さんに負けたり、年寄りじみた弱みを見せるわけにいきません。

このように、私の周辺には「元気な老人たち」がたくさんおられます。私はその人たちのお陰で、自分はまだ若い、まだやれる、という思いを持ち続けることができていると思います。
また、そういう人たちに負けないように、恥ずかしくないように振る舞う、という願望が加齢に抗するエネルギーを与えてくれているように思います。
よく、「若い人たちに囲まれて生活していると老けない」などと言われますが、私の場合は逆で、「元気な老人たち」に囲まれ、そういう人たちから日々刺激を受けているために、それなりの若さを維持できているのではないかと思う昨今です。