YouTubeの著作権侵害対策

 高橋 英伸

2008年12月01日

2008年11月25日、インターネット上の動画投稿サイト最大手「YouTube」を運営するグーグル日本法人は、YouTubeの事業説明会において、著作権に関して問題がある投稿コンテンツ(ここでは動画)を検出・処理するシステム「コンテンツID」を導入し、成果を挙げていると発表したとのことです。このシステムは、事前に著作権者や著作物の利用許諾を受けた者にコンテンツを登録してもらい、YouTubeのユーザーがコンテンツを投稿した際に、登録されたコンテンツと投稿されたコンテンツを自動的に比較、照合し、投稿されたコンテンツが登録されたコンテンツと同じであれば、YouTubeが公開前に著作権者等に対して投稿があったことを報告し、著作権者等に同投稿の処理(削除、掲載継続など)を委ねるシステムとのことです。
以下、このニュースの意味を著作権の観点から簡単に解説したいと思います。なお、著作権の内容は各国法により定めが異なるので、本稿では日本法を前提とします。

YouTubeに投稿されるコンテンツは、そのほとんどが連続する映像により表現されるものであり、著作権法上は「映画の著作物」に該当します。著作権法上、著作物を自動的に公衆に対して送信できる状態に置くことを「送信可能化」といい、その権利を「送信可能化権」といいます。インターネットのサイトで著作物をいつでも誰でもダウンロードできる状態に置く事は送信可能化に当ります。この送信可能化は、著作権者等でなければ原則できません。
YouTubeは、独自のサーバーに投稿され記録された動画を公衆がいつでも自由にダウンロードできるサービスを提供しているので、著作権法の観点からいえば、映画の著作物を送信可能化しているのです。よって、YouTubeは、投稿された著作物について著作権者等から送信可能化を許諾されていなければ、著作権を侵害していることになります。YouTubeは、その利用規約で、投稿時から投稿データ削除時まで、ユーザーがYouTubeに対して投稿コンテンツの利用(送信可能化を含む)を許諾するという定めを置いています。よって、YouTubeは、著作権者等であるユーザーが権限に基づき投稿したコンテンツについてのみ、適法に利用許諾を受けて送信可能化していると理解できます。

もっとも、実際には、投稿者以外の第三者が著作権やその利用権を有する映画やアニメ、テレビ番組などがそのままYouTubeに投稿されているケースが極めて多く、無数の著作権侵害(送信可能化権侵害)が存在しています。YouTubeは一般市民が世界中に動画コンテンツを提供できる革新的サービスとして登場以来の数年間で世界中に普及し、その有用性を誰もが認めているのですが、他面でこの無数の著作権侵害が問題となっています。ただし、侵害を受けている著作権者等には、著作物を野放しに侵害されているというマイナス面がある一方で、世界中に著作物が宣伝されているというプラス面もあるようです。

YouTubeが全ての著作権侵害を防ぐためには、全投稿が投稿者以外の第三者の著作権を侵害しているか否かを、YouTube自らチェックして、侵害物については公開を拒絶する必要がありますが、投稿の数、種類が余りに多いため、そのような対処は物理的に不可能です。他方、利用規約に第三者の著作権を侵害する投稿を拒否する条項を定めるだけでは、現実に発生している無数の著作権侵害を防げていないため、著作権者等は十分な侵害対策がされているとは認めません。

そこで、YouTubeは、著作権侵害の全てを防ぐことができないことを前提としつつ、可能な限り著作権侵害を防ぎ、著作権者等に納得してもらえるように工夫をしています。その工夫の一つとして、上記のコンテンツIDというシステムを導入して成果を挙げ、著作権者等からも一定の理解を示されているということのようです。