離婚
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<1.離婚-新たなる旅立ち>
他人であった二人が巡り会って結婚し、家族となった以上、一生仲良く暮らせればこれ以上幸せなことはありません。
しかし、現実にはうまくいかないこともあります。お互い生まれ育った環境も、ものの考え方も違うのですから、必ずしも良い関係が続くとは限らないのも事実です。
夫婦の関係をどうしても修復できない、離婚したい、と夫婦のどちらかが決意した場合に離婚問題が発生します。
今日、年に約24万3000組ものカップルが離婚しています(1998年の統計による)。1960年には年に約6万9000組であったことを考えるとずいぶん増加しています。
一昔前に比べると、仲が悪いのに無理に一緒にいることはないという考え方が一般化しつつあることや、女性の経済的地位が高まったことなどが影響しているのでしょう。
しかし、離婚問題の当事者にとっては、離婚は依然として大変重大な事柄であり、離婚が認められるのかどうか、離婚後の経済的な問題はどうなるのか、子供の問題はどうなるかなど様々な心配はつきません。
このシリーズでは、離婚手続の概要、どのような場合に離婚が認められるか、子供に対する親権の問題、財産分与・慰謝料・養育費等離婚に伴う金銭問題について説明します。

【離婚手続】

離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。

協議離婚
協議離婚とは、夫婦で話し合って離婚することを合意した場合に、離婚届に自署・捺印し、届出書を役所に提出することで成立する離婚です。
夫婦が離婚することを決めさえすれば、協議離婚はできますので、最も簡単な離婚の方法です。
日本における離婚の約90%が協議離婚です。
協議離婚にあたっては、誰が未成年の子の親権者になるのかということを決める必要がありますが、財産分与や、慰謝料、養育費等の定めについて記入する欄はありませんので、別に定めることが必要です。
口約束だけでは、後になって支払われないことも多いので、約束した内容を書面にするか、念のために公正証書にするという方法もあります。
約束した内容を書面にしておけば、言った言わないの争いを防げますし、慰謝料や養育費など金銭についての取り決めについては、公正証書にしておけば、判決と同じ効力がありますので、それに基づいて相手の財産を差し押さえることも可能です。

調停離婚
夫婦で話し合って結論がでない、直接話合いをしようにも、相手方が感情的であるなどの理由で話し合いが進まない場合などに取られる手段が、調停離婚です。離婚するという結論自体については合意していても、離婚に伴う条件について合意ができていない場合も調停による話し合いが必要です。
離婚調停は、夫婦のどちらか一方が、家庭裁判所に調停を申し立てることによって始めることができます。
夫婦の戸籍謄本と、家庭裁判所に備え付けてある「夫婦関係調整事件申立書」に必要事項を記入したものを準備し、これらを提出するとともに、900円の印紙と切手1000円分程度を納めることで申立手続は完了します。
必要事項の記入は、離婚について希望する条件(未成年の子の親権の問題や、養育費の問題、慰謝料や財産分与の問題についての条件)や、離婚をしたい理由、予想される相手方の態度等について、該当事項にマークをつけたり、自分で文章を書き込んだりします。
申立手続自体はごく簡単なもので、弁護士を依頼しなくとも自分で行うことができます。
その後、家庭裁判所から相手方に呼び出し状が送付され、双方が家庭裁判所に出頭します。
調停においては、調停委員や裁判官が双方の意見を聞き、話し合いを行います。
話し合いの方法は、通常、双方が交替で調停委員や裁判官に話を聞いてもらい、こちらの言い分を相手に伝えてもらったり、相手の言い分を伝えられたりしながら、合意できることはどこか、合意できないところはどこかを確認しつつ、今の時点で合意できないことでもお互い歩み寄ることはできないかを話し合っていきます。
調停離婚が成立するには、離婚するだけでなく、親権、財産関係など離婚に関わる事柄について、双方が合意することが必要です。
つまり、調停は、話し合いの場を家庭裁判所に移し、調停委員や裁判官の助けを借りることができるという意味では、協議離婚の場合と異なりますが、基本的には当事者間の譲り合いと納得のうえで、離婚の成否や、離婚の条件が決められることになるのです。
ですから、離婚条件を決めるにあたっては、裁判例等もある程度参考にはされますが、最終的に結論を決めるのは本人次第ということになります。
調停にあたっては、調停委員に任せきりというのではなく、自分の希望する条件をしっかり述べ、譲るべきところは譲り、合意ができる条件を探っていくことが必要です。
離婚するかどうかとか、親権をどちらも欲しいなど、重大な対立が生じており、どちらも譲歩する可能性がない場合には、話し合いを重ねても無駄になってしまいます。
このような場合には調停を打ちきって裁判手続に入ることになります。
なお、調停が成立した場合には、その条件が調停調書に記載されます。その調停調書に記載された条件は、裁判の判決と同じ効力がありますので、それに基づいて相手の財産を差し押さえることも可能です。
具体的には、例えば、AさんがBさんに対して、毎月末に子供の養育費として3万円を支払うと調停調書に記載した場合に、Aさんがその約束を守らない場合には、Bさんはこの調停調書に基づいて、Bさんの財産を差し押さえる手続(強制執行手続)をとることができます。

裁判離婚
裁判離婚とは、裁判所の判決によって、離婚が成立するものです。
調停で話し合いをしても、お互いが納得できる結論がでない場合には、離婚を求める側から地方裁判所に対して訴えを起こすことになります。
裁判所は、互いの主張や証拠を検討して、離婚の理由があるかどうかや離婚の条件についての当事者の主張が認められるかどうかについて判断を行います。
この手続であれば、これまで説明した協議離婚や調停離婚と異なり、当事者の合意がなくとも離婚が成立することがあります。
離婚が認められるのは、次のいずれかのケースにあてはまる場合です。

1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき(夫婦の同居・協力・扶助義務に違反する行為があった場合)
3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

この中で裁判上問題となることが最も多いのは、裁判の当事者である夫婦について、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と認められるかどうかです。
詳しくは回を改めて説明しますが、例えば不貞行為をしている配偶者側(法律上の用語で有責配偶者といいます。)からの離婚請求は認められるか、認められる場合があるとすればどのような場合に認められるかが大きな問題になっています。
裁判離婚の場合は、通常弁護士を代理人とする必要があります。
離婚の判決が出るまでには、訴え提起の時からおおよそ半年から1年がかかります。
さらに、高等裁判所や最高裁判所に控訴、上告を行えば、さらに時間がかかりますので、解決までに数年間を要することも少なくありません。

<2.裁判による離婚の条件-どのような場合に離婚が認められるか>

今回は、夫婦の一方が離婚を希望しているが相手が離婚に同意しないとき、どのような場合に離婚が認められるかについて、述べたいと思います。
前回述べたように、離婚は、当事者が合意して、協議離婚(通常の離婚届出書の提出による離婚)あるいは、調停離婚という形で成立するのが大部分ですが、当事者間で合意が成立しない場合には、裁判によって離婚を成立させるほかありません。
判決(裁判)によって成立する離婚を裁判離婚といいます。
裁判離婚が認められるのは、民法で定められた以下のいずれかに該当する事情がある場合です。

1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき(夫婦の同居・協力・扶助義務に違反する行為があった場合)
3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

【「婚姻を継続し難い重大な事由」とは】

裁判上の離婚原因のうち、圧倒的に多いのは5番目の「婚姻を継続し難い重大な事由」です。
この離婚原因は、抽象的な内容ですので、具体的にどのような事情があれば、離婚原因があると認められるのかが議論されてきました。
特に後述の昭和62年の最高裁判決により、不貞行為をしている配偶者側(いわゆる有責配偶者)からの離婚請求が認められたことから、どのような場合に離婚が認められるのかが問題となります。
そこで、ここでは、「婚姻を継続し難い重大な事由」について述べるとともに、有責配偶者からの離婚請求がどのような場合に認められているのかについて説明したいと思います。

「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、夫婦の関係が修復不可能なほどに壊れてしまっている場合をいいます。
その判断にあたっては、婚姻中における両当事者の行為や態度、婚姻継続の意思の有無、子の有無、子の状態、さらには、双方の年齢・健康状態・性格・経歴・職業・資産収入など一切の事情が考慮されます。
具体例としては、まず、離婚を要求されている側の暴力、虐待、侮辱、常軌を逸した性関係の強要、浪費や犯罪、夫が正当な理由なく働かないこと、親族との不仲などがあげられます。
また、3年にみたない生死不明(3年以上の生死不明は独立の離婚原因になります。)、「強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」にはあたらないが精神病に罹患していること、精神病以外の病気、性的不能、性格の不一致、愛情の喪失なども離婚の原因として認められる場合があります。
ただ、これらのいずれか1つの事情にあてはまれば、当然に離婚が認められるのではなく、裁判所が夫婦の関係が修復不可能かどうかを判断するにあたり、これらの事情を重大な考慮要素としているということに注意が必要です。

【有責配偶者からの離婚請求】

もっとも、夫婦間において、一方から相手方に対して裁判において離婚を要求する段階にまで至っている場合には、夫婦の関係は修復不可能なまでに壊れてしまっていると認められる場合が多いでしょう。
そういうことからすれば、金銭的な問題等の条件面をさておくとすれば、ほとんどの離婚訴訟において、離婚の成立自体は認められるようにも思えます。
しかし、夫婦関係の壊れる原因を主に作った側(有責配偶者)からの離婚請求は認められないとするのが、かつての裁判所の立場でした。
というのは、自分が愛人を作って家庭を崩壊させておいて、夫婦関係が完全に破壊されたので、婚姻は継続できません、だから離婚を認めて下さい、というのでは、あまりに勝手すぎるし、そのような要求は相手方にとってあまりに酷だと考えられてきたからです。
例えば、昭和27年、最高裁判所は、有責配偶者からの離婚請求に対し、「勝手に愛人をもった夫からの離婚請求が許されるならば、妻は踏んだり蹴ったりである。」として有責配偶者からの離婚請求を否定し、裁判所は長年にわたってそのような扱いを続けていました。

ところが、昭和62年、最高裁判所は、夫婦関係が破綻し、妻以外との女性との同棲関係にある、有責配偶者からの離婚請求に対し、次のような判決を出し、これまでの立場を変更しました。
1 夫婦の別居が、両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当長期間に及んでいること
2 その間に未成熟の子がないこと
3 妻が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況におかれる等、離婚請求を認容することが著しく正義に反する特段の事由がないこと
以上の条件で、有責配偶者からの離婚請求も認められる場合がある。

つまり、離婚の原因を自ら作り出した有責配偶者からの請求であっても、上記のような条件を満たせば離婚が成立することになるわけです。

上記の最高裁判決の事案では、別居期間は約36年でしたが、離婚の裁判例においては徐々に別居期間が短縮される傾向にあり、おおむね別居期間が7~8年であって、他の条件を満たしていれば離婚請求が認められている傾向にあります。

<3.離婚と子の問題>

離婚に際して、夫婦間に未成年の子がいる場合、子についての問題をどのように解決するのかは、金銭面の問題と共に最も重要な問題になります。
誰を親権者に定めるのか、誰が実際に養育するのか、養育費はどのように決めるのかなど、様々な法律問題が発生します。
特に近年は少子化の結果、子に対する両親(及びその親族)の愛着が強まる傾向にあり、また、両親の育児への参画形態が変化していることもあり、親権をめぐる争いが増加・深刻化しています。
今回は、離婚の際に、子に関して発生する法律問題について述べたいと思います。

【「親権者」とは】

芸能ニュースなどで、離婚に伴い、親権者は誰々になった、などと報じられることがあります。
「親権者」とは「親権」を持つ者です。ではその「親権」とはどのような権利でしょうか。
「親権」とは、「未成年の子を健全な一人前の社会人として育成すべく養育保護する職分であり、そのために認められた特殊の法的地位」であると定義されています。
具体的には、親が未成年の子を養育・保護・教育する権利義務であり、大きくわけて、子の実際の養育に関する権利義務(身上監護権)と子の財産に関する権利義務(財産管理権)に分けられます。
通常は親権者が子供の養育を行う権利義務(身上監護権)を有する「監護権者」になるわけですが、親権者とは別に監護権者を決定することもできます。
離婚という事態にならなければ、両親が共同で親権を行使することになります。

【離婚に伴う親権者の定め】

離婚の場合に、未成年の子がいる場合、必ず親権者をどちらかに定めなければなりません。
例えば、協議離婚の届出の際には、親権者を定めなければ離婚届は受け付けてもらえません。
親権者を誰にするかについて夫婦の間で協議ができればそれで良いのですが、協議が整わない場合には、家庭裁判所の調停で話し合いのうえ、(調停でも話し合いができなければ)最終的には裁判所の判断によって決められることになります。
親権者を定めるにあたっては、親側の事情として、監護能力、精神的・経済的家庭環境、居住・教育環境、子に対する愛情の度合い、従来の監護状況、実家の資産、親族の援助の可能性、子の側の事情として、子の年齢、発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、子の意向、父母及び親族との結びつきなどの様々な具体的事情を総合的に考慮して、どちらを親権者にすることが子供にとってベターなのかを判断することになります。
考慮の基準としては、「乳幼児については特別の事情がないかぎり、母親の監護養育が子供の福祉に合致する。」(母親優先の基準)とか、「現実に子を養育監護する者を優先させるべきである。」(現状尊重の基準)とか、「子の意思尊重の基準(子の年齢の高まりとともに尊重の必要性も高まる。)」とか、幼い兄弟を分離して養育すべきではないとの基準、などがあります。
もちろんこれらの基準が衝突することもあり、絶対的なものではありませんが、実務的には概ねこれらの基準で運用されていると言ってよいでしょう。

【親権者を定めた効果】

協議にせよ、裁判所の判断にせよ、いったん親権者や監護権者が定められた場合、基本的にはその者のみが子を養育・監護することになり、親権者・監護権者の意思に反して子供を連れ去ったりすれば、誘拐罪に問われることもありますし、人身保護法により子の引き渡しを強制されることもあります。
もちろん、両親双方の協議が整えば、調停により親権者の変更を行うこともできますし、子の利益のため必要があるときは、家庭裁判所の判断で親権者・監護権者の変更を行うこともできます。
ただし、著しい事情の変更もないのに、相手の意思に反して親権者の変更をすることは認められませんし、前述のように「現状優先の基準」もありますので、親権者・監護権者の変更は決して容易なものではありません。
ですから、離婚を急ぐあまりにとりあえず相手に親権を認めたとか、離婚のときは経済的に不安だったので親権を相手に渡した、とかいう話を耳にすることがありますが、このような選択は永久に親権を放棄する結果になりかねないということを理解すべきでしょう。

【養育費について】

養育費については、話し合いで決まればそれで良いのですが、協議が整わない場合は、裁判所が決定することになります。
一方の親の収入が高い場合は子にも同等の生活程度を保証するのが原則です。
ただ、親が通常の収入の場合は、子供の年齢にもよりますが、子供一人につき月額2万円から5万円程度になることが多いのが実情です。
養育費について協議が整った場合は、後日の支払いを確保するため、公正証書を作成したり、家庭裁判所に調停を申し立てて調停調書を作成してもらうことが望ましいでしょう。

【面接交渉権】

離婚後、親権者もしくは監護権者とならなかった親がその未成年の子を面接交渉する権利を面接交渉権といいます。
面接交渉権は、あくまで子の福祉の観点から面接交渉を認めることが子供にとっていいのかどうかという観点から決定されます。
私の個人的な意見ですが、父母の感情的な対立が顕著な事案においては、幼い子供にとっては面接交渉権を認めることが望ましくない場合が多いと思われます。

<4.離婚に伴う財産給付>
【離婚に伴う財産給付の種類】

離婚に伴う財産給付としては、財産分与、慰謝料、養育費があります。
財産分与の内容としては、(1)婚姻中に形成した夫婦の共有財産の清算があげられます。
これが財産分与のメインではありますが、このほか、(2)離婚後の扶養(離婚によって生活を維持することが不可能ないし困難になる人に対し、一定の財産を与える。)と、(3)離婚による慰謝料、(4)過去の婚姻費用の清算(過去にいずれかが多くの生活費等を負担した場合の清算。)なども、財産分与の内容とされます。
慰謝料は、過去の夫婦生活においてまたは離婚に関連して、相手に対して違法に精神的苦痛を与えたことに対する損害賠償です。
養育費とは、未成年の子の養育に必要な費用であり、子供の実際の養育を行わない人から養育を行っている人に対して支払われます。
今回は、財産分与と慰謝料について解説します。

【財産分与・慰謝料はどのようにして決まる?】

離婚した場合、財産分与や慰謝料は、どのようにして決定されるのでしょうか。
芸能ニュースなどでは、かなり高額の財産分与や慰謝料が話題になることはありますが、通常はそれほど多くの額が支払われるわけではありません。
特に、財産分与については、基本的に夫婦で形成した財産の半分が目安なのですから、財産のない夫婦が離婚する場合、財産分与は全くないか、ごく少額になる場合がほとんどです。
唯一の資産がローンで購入した自宅のみである場合、最近の不動産価格の下落のため、自宅を売却してもローンのみが残るというケースも少なくありません。
この場合は、債務について分担方法を決めるというのではなく、契約にしたがって債務の名義人が債務を負担していくことになります。
不公平なようですが、財産分与はあくまでプラスの財産の分け方の問題であり、債務はプラスの財産がある場合にのみ考慮されることになるというのが、法律の考え方です。

もちろん、財産分与も慰謝料も、双方の協議が整えば、話し合いで決定することができます。
但し、確実に支払ってもらえるように、合意の内容に基づいて、公正証書を作成したり、家庭裁判所に調停を申し立てて調停調書を作成してもらうことが望ましいでしょう。

【財産分与について】

財産分与について協議が整わないときは、家庭裁判所が協議に代わる処分をすることができます。
また、離婚の成否そのものが裁判によって争われる場合には、財産分与や慰謝料等の問題についても離婚についての裁判とあわせて、地方裁判所が裁判を行います。
裁判所は、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」こととなっています。
これは、非常に抽象的な規定ですが、だいたい以下のように考えられています。
(1)結婚前から持っていた財産、相続によって取得した財産については、基本的には財産分与の対象ではない。(減少を防いだことが評価されることはある。)
(2)財産の名義が誰であろうとも、夫婦の協力によって得た財産は、財産分与の対象である。
(3)妻が専業主婦の場合でも、妻の協力により夫婦の財産を取得ないし維持(減少しないようにできた)とされる場合には、妻には、その貢献に応じて財産が分与される。
(4)通常の場合、夫婦の貢献割合は、平等と推定される。(まず平等というところから出発して種々事情により調整する。)
(5)将来取得する予定の退職金、年金についても、財産分与の対象となりうる。
なお、財産分与は、離婚から2年以内に請求しなければ、請求する権利がなくなってしまうことに注意が必要です。

【慰謝料について】

慰謝料について協議が整わないときは、基本的には裁判で決定されます。
慰謝料は、精神的苦痛に対する賠償ですが、不法行為の一種なので、相手の行為が法律上許されないほど悪質であることが必要です。
嫌いな人と一緒に生活して精神的にいやだったとか、性格があわないというだけでは、慰謝料の発生はありません。
具体的には、不貞、暴行、虐待、遺棄、生活費の不払、性的障害を隠して結婚したことなどの原因が必要です。
これらの個々の事情の悪質性と、結婚期間の長短によって、慰謝料の額は変わってきます。
近年は、上記のような典型的な事情以外にも、夫が仕事中心で帰宅が遅く、夫婦の会話もないというケースで慰謝料の支払いが認められたケースもあります。

【財産分与・慰謝料額の目安】

具体的には、財産分与や慰謝料としてどれくらいの額が支払われるのでしょうか。
家庭裁判所で話し合いがついた事案ないし家庭裁判所の審判が下された事案についての統計によれば、平均で慰謝料と財産分与を併せて約450万円になっています。
婚姻期間に応じて合計額は増加していきます。
婚姻期間1年以上5年未満で約200万円。
5年以上10年未満で約330万円。
10年以上15年未満で約430万円。
15年以上20年未満で約620万円。
20年以上で約920万円
25年以上で約1000万円。
もちろん、この統計に算入されていない離婚例もあるので、この統計をうのみにするわけにはいきませんが、参考になるのではないでしょうか。