税務調査のポイント
【関連カテゴリー】

事業者の法人税・所得税は、納税者自身が管轄の税務署へ申告を行い税額を確定させ、この税額を自ら納付する申告納税制度が採用されています。
しかし、誤った申告があると納税者間に課税の不公平が生じるため、税務調査による納税義務の適正な履行が必要となります。
この趣旨を理解して、次に掲げる“税務調査ポイント”の指摘を受けないように適正な申告納税に努めましょう。

【主要な税務調査ポイント】
事業者を対象とした税務調査で指摘される課税漏れの原因は、大きく「売上除外」「棚卸除外」「経費の仮装」に集約されると言われています。
具体的には、以下の項目がチェックされます。
なお、これらが故意に行われたものかどうかを判別し、仮装・隠ぺいされた事実が明らかな場合には、国税通則法第68条に定める重加算税の対象となります。

1 現金管理状況
現金出納帳と実際の現金残高が一致しているか、どんぶり勘定になっていないか。
どんぶり勘定が必ず引き起こすものは「勘定合って銭足らず」です。
法人の場合、現金不足は役員賞与と認定されることもあるので要注意です。

2 現金の流れと管理状況
どのような取引先からどのような方法で受発注し、納品、決済しているか。
特に「どうやって受注し、どうやって商品やサービスを提供し、どうやって入金するか」といったお金の流れは深く質問されます。
取引の把握漏れがないように自主点検をしましょう。

3 売上繰り延べ
税務上、売上の計上時期は原則として「商品を引き渡したとき」や「サービスを提供したとき」となっており、「入金時」や「請求書発行時」ではありません。
この点を誤ると「売上計上漏れ」で追徴税額が生じます。

4 自家消費分の計上漏れ
自家用に使える商品を消費した場合、その分の売上計上が漏れていないか。
特に飲食業や工務店等は注意が必要です。

5 棚卸計上漏れ
棚卸在庫を過小に見積もっていないか。
そのための帳票類を誤っていないか。
在庫商品では、期末の在庫を減らせばその分利益が減るため、調査時に重要視されます。
期末1か月以内くらいに仕入れた全商品が、どうなっているかをサンプリングして追跡調査する手法で確認されます。

6 帳票類の整合性
見積書、請求書、納品書、領収書がすべて揃っているか。
不自然な日付や金額の記載がないか。
自然な流れで恣意的な操作の可能性がチェックされます。

7 修繕費と資本的支出との区分
多額の修繕費が計上されている場合、「原状回復」を超えて対象物の価値が増していないか。
ここは、判断の難しい問題です。

8 私的費用の経費計上
事業と関係のない、代表者の私的な費用を計上していないか。
個人的な支出と判断された場合には、その支出が社長への役員賞与とされ全額経費に計上できなくなるばかりか、社長の役員賞与に対する源泉所得税の徴収漏れの扱いとなり、二重課税されます。
さらに、交際費として消費税の課税仕入れとなっていたものも、賞与扱いにより仕入税額控除が認められず、その分の消費税を支払うことになります。

9 代表者による不正蓄財
代表者が、本人または家族の名義で不正な蓄財を行っていないか。
会社の調査でも不審なケースがある場合は、個人の預貯金まで調べられます。

10 人件費の管理状況
従業員の源泉徴収漏れや、架空の人件費計上はないか。
特に給料を現金で支給していたり、履歴書を保存していなかったりすると疑いを持たれますので、しっかり管理しましょう。

11 消費税の課税仕入額
消費税の課税仕入額に非課税分が含まれていないか。
また、書類の保存がない場合にも仕入税額控除が受けられないので、保存状況も確認しておきましょう。

12 消費税の不正還付
虚偽の申告により、不正な消費税の還付を受けていないか。

13 収入印紙の未貼付
収入印紙の貼り忘れなどによって、印紙税の未納付はないか。
印紙税をその課税文書作成時までに納付しなかった場合には、過怠税がかかります。
その金額は、原則としてその納付すべき印紙税額の3倍(最低額1,000円)とされています。
ただし、自主的にその不納付を申し出るなど一定の要件を満たせば、不納付税額の1.1倍とされます。
また、消印をしなかった場合にも、印紙税額と同額の過怠税が徴収されます。
なお、印紙税は原則、税法上の費用(損金)となりますが、過怠税は費用とすることができませんので、注意が必要です。

【最近の税務調査の傾向】
国税庁では近年、実地調査に当たって、「海外取引」「消費税」「無所得申告」「無申告」の4つについて、重点的に取り組んでいるようです。

1 海外取引を通じて不正に税逃れが行われないようにする。
2 消費税については、不正還付等がないように厳しく管理をする。
3 無所得申告については、調査の7割から申告漏れが把握されたという実績もあり、調査対象とする。
4 無申告法人については、重点的に取組む。

また、電子メールのやり取りも税務調査の対象となっていますので、留意しておきましょう。