現物給与(経済的利益)に関するQ&A
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所得税では、会社から現金で支給されるものだけでなく、経済的利益を受けたと見なされると、給与と同様に課税されることになります。
判断に迷うケースも多いので、以下、Q&A方式で身近な例を取り上げてみます。

【健康診断費用】
Q
役員、従業員の健康診断費用を負担した場合、経費になりますか。
また、一部の人が人間ドックを受けている場合はどのように取り扱われますか。

A
原則として、会社が負担した検診費用は、役員のみまたは特殊関係人(役員の親族、事実上婚姻関係と同様の関係にある者等)のみを対象としたものや、著しく高額である場合を除き、福利厚生費として損金の額に算入されます。
年齢40歳以上の役員および従業員を対象として人間ドックなど別メニューの検診項目とすることなどは合理的だと一般的に考えられていますが、役員のみを対象としたものや、著しく高額であると認められるものを負担した場合には、その役員等に対する給与(賞与)となり、損金に算入できません。
福利厚生費は、役員、従業員を問わず機会均等でなくてはなりません。

【永年勤続者に対する旅行費用・記念品の支給】
Q
役員または従業員のうち永年勤続者に対して、次のものを支給した場合、現物給与として課税されませんか。
(1) 永年勤続者のうち、勤続25年に達した者には2泊3日の旅行相当(10万円程度)、勤続35年に達した者には4泊5日の旅行相当(20万円程度)とし、その実際の費用を会社が支払った場合
(2) 勤続25年の永年勤続者に、10万円に相当する旅行クーポン券を支給した場合

A
使用者が、永年勤続の役員または従業員の表彰に当たり、その記念として旅行、観劇等に招待し、または記念品(現物に代えて支給する金銭は含まない。)を支給することにより、その役員または従業員が受ける利益で、次に掲げる要件のいずれにも該当するものについては、課税されません。
(1) その受ける経済的利益が、その役員または従業員の勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められること
(2) その表彰が概ね10年以上の勤続年数の者を対象とし、かつ、2回以上表彰を受ける者については、概ね5年以上の間隔をあけて行われていること
なお、これらの表彰に当たり、金銭で支給した場合や、同一の永年勤続者につき均一に行われない場合は、すべて給与課税とされます。
質問(1)については、社会通念上相当なものと思われますので問題ありません。
一方、質問(2)については、金銭と引き換えることができる旅行クーポン券の場合、実質的には金銭の支給と変わりないので、原則として券面額に相当する金額の給与の支給があったものとして、源泉徴収の対象となります。

【使用者から貸与を受けた住宅等に係る賃貸料相当額】
Q
当社では、社宅がないので従業員を居住させるために当社名義でアパートを借り受けて(月家賃12万円)、これを月4万円で従業員に貸し付けた場合、差額8万円は経費として認められるでしょうか。
それとも、給与課税されますか。

A
結論としては、会社が他から借り受けた住宅を従業員に貸与する場合には、一定の算式により計算される通常の賃貸料の50%相当額以上を受領していれば、実際の家賃と従業員に貸し付ける家賃との差額は、従業員に対する給与とはされません。

〈算式〉
 賃貸料相当額(月額)=
  (その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×0.2%)
 +(12円×当該家屋の総床面積/3.3平方メートル)
 +(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%)
(例)
 家屋の固定資産税課税標準額 500万円
 土地の固定資産税課税標準額 800万円
 家屋の床面積 40平方メートル
 (500万×0.2%)+(12×40/3.3)+(800万×0.22%)≒27,745円

実際問題として、アパートを借りた場合、その家賃の固定資産税の課税標準を明らかにすることは難しいと思われますが、前記算式で計算される金額は、賃貸相場よりかなり低く(2割程度となることが多い)、しかもその50%以上の家賃でよいので優遇されていることになります。
また、複数の従業員に対して住宅を貸与している場合で、その住宅の状況に応じてバランスのとれた賃貸料を徴収しているとき、例えばAは4万円、Bは3万円、Cは5万円と様々な賃貸料を徴収しているときには、賃貸料の合計額が前記の算式により計算された通常の賃貸料の50%相当額以上となっていれば、そのすべての従業員に対して経済的利益の供与はないものとされます。

【食事を支給したとき】
Q
従業員に食事を支給した場合、給与として課税されませんか。

A
従業員に支給する食事は、(1)従業員が食事の価額の半分以上を負担していること、(2)食事の価額から従業員が負担している金額を差し引いた金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であることの要件をどちらも満たしていれば、給与課税はされません。
例えば、1か月当たりの食事の価額が5,000円で、従業員が負担している金額が2,000円の場合は、(1)を満たしていないことから、差額の3,000円は給与課税されます。
食事の価額とは、仕出し弁当などを取り寄せて支給している場合は、業者への支払い金額、社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合は、食事を作るために直接かかった費用の合計額をいいます。
なお、残業または宿日直者へ支給する食事は無料でも給与課税されません。