独立役員届出書の結果について
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証券取引所の有価証券上場規程の改正により、上場会社は独立役員を1名以上確保することになっています。独立役員とは一般株主と利害相反が生じるおそれのない社外取締役や社外監査役のことです(詳しくは当職執筆の法律情報「独立役員確保の義務化について」をご覧ください。)
上場会社は、本年(2010年)3月31日までに独立役員届出書を証券取引所に提出しなければなりませんでした。
また、コーポレート・ガバナンス報告書に「独立役員の確保の状況」を記載して本年(2010年)6月以降の株主総会後に提出しなければなりません。ただし、3月31日に提出されたコーポレート・ガバナンス報告書にこれを記載していれば総会終了後の提出は不要です。

東京証券取引所は独立役員届出書の提出結果を一覧表にまとめてホームページで開示しています。また、商事法務はこの提出結果の分析を発表しています。
それによると、2231社が届け出済みで、独立役員を確保していない会社は224社(約10%)、独立役員数は3819人で75%が社外監査役、25%が社外取締役ということです。
独立役員未確保の224社のうち約半分は今年(2010年)の定時株主総会(3月決算の会社であれば6月定時株主総会)終了までに選任するとしています。しかし、約半分は来年(2011年)の定時株主総会終了までに選任するとしているか、または独立役員確保の予定について明確な期限を述べていません。

会社が届け出ようとする独立役員が証券取引所の定める事項に該当するときは、会社は届出書提出前に独立性の有無について証券取引所との事前相談が必要です。証券取引所は「上場管理等に関するガイドライン」でこれらの事項を定めています(詳しくは当事務所の上記ホームページをご覧ください)。また、独立性とは一般株主と利益相反が生じるおそれがないということです。
届け出られた独立役員の約6%がガイドラインに定められた事項に該当するが独立性ありということになっています。これらの事項に該当するとされている独立役員の大半が取引先金融機関の取締役や執行役員だった者です。それでも、会社が独立性ありとする主たる理由は、退職して相当年数が経過していること(大体5年以上経過している例が多い)と借入が突出しておらず影響力がないことです。どちらか一方の理由のみをあげている会社もあります。
また、届け出られた独立役員が主要株主の取締役・執行役員でも、独立性ありとして独立役員届出書が受理されている例もあります。会社が独立性ありとする理由は、主要株主と異なる事業分野を営んでいること、主要株主とほとんど取引がないことです。

上場会社の約10%弱は社外役員に独立性がないという状況にあったわけですから、独立役員制度の導入はそれなりに意義があったと評価できるかもしれません。
しかし、上場会社の約90%に独立性のある社外役員が一人はいるとしても、その社外役員すなわち独立役員は主要株主や取引先の現在または過去に取締役・執行役員だった場合もあります。このような場合、その独立役員が出身会社の利害を斟酌せずに一般株主の利益のために判断することを期待できるかは疑問の余地があります。
今回の分析結果からは、想定していたより緩やかな基準で証券取引所は独立役員の届出を受理したとの感想をもっています。