派遣対象業務原則自由に-労働者派遣法改正
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【労働者派遣法改正】
平成11年7月7日「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(これを「労働者派遣法」といいます。)の改正法が公布され、同年12月1日施行されました。
本法の改正は少し前の話になりますが、派遣社員が増える中、雇用者の方や労働者の方にご参考になればと思い、今回のトピックスとさせていただきました。

【改正の理由】
近年、派遣労働者の数が着実に増加しています。
その理由としては、まず第1に、労働者の側に、正社員として勤務して会社に拘束されるよりも、働く曜日や時間を自由に選びたいといった仕事に対する意識の多様化が進んだことが挙げられます。
第2に、雇用者側の企業においても、長引く不況の下、臨時的・一時的な労働需要に即応する戦力として派遣労働者を受け入れたいという要望が高まったことが挙げられます。
ところが、今までは、特に法で認められた専門的業務に限定して人材派遣が認められていました。
このような法制度では、派遣労働者に対する社会の需要に対し十分に対応できないことから、原則として人材派遣を自由化し、その一方で派遣される労働者側の保護を強化すべきであるという考えが強まりました。
その結果、今回、労働者派遣法が改正されました。

【改正の内容】
今回の労働者派遣法改正の主な内容は以下のとおりです。

(1)(派遣対象業務の原則自由化)
労働者派遣事業の対象業務は、これまで特定業務のみに認められていました。
今般の改正により、対象業務は原則自由としました。
これにより、雇用者側は、労働者の不足を派遣社員によって補うことが容易になります。
例外として、港湾運送業務、建設業務、警備業務、その他政令で定める業務は、派遣事業の対象から除外されます。

(2)(派遣期間の制限ー原則1年)
労働者派遣の期間については、これまで特に制限がありませんでした。
今般の改正では、原則として、派遣先は、同一の業務について一年を超える期間継続して労働者派遣を受けられないこととなりました。
これは、派遣制度はあくまで臨時的・一時的な労働者不足を補うためのものであるという考え方に立つもので、正社員の数を削減するために派遣制度が利用されることを防止することによって労働者の保護を図ったものです。
ただし、例外として、(1)従来派遣が認められていた専門的業務(機械設計やソフトウェア開発等)及び(2)事業の開始、廃止などのために一定期間内に事業が完了する場合には3年を上限とし、さらに(3)派遣先の雇用労働者が産前産後休業及び育児休業する場合の交替として派遣される場合には2年を上限として派遣を許しています。

(3)(派遣先の雇用努力義務)
派遣先は、前項によって1年を超える期間継続して労働者派遣を受けてはならないこととしている業務について、継続して1年間労働者派遣を受けた場合において、引き続きその業務に従事させるため労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者を雇い入れるように努めなければならないこととしました。
このような義務を課すことによって、派遣労働者の保護を図ったものです。

【まとめ】
かつての終身雇用制度、年功序列制度が崩れていく中、企業側も労働者側も正しい法律知識を持ちつつ、お互いの利害得失を考えて、正社員として雇用・勤務するのか、派遣社員として雇用・勤務するのかを決定することが望まれます。