民泊に関する「住宅宿泊事業法案」について
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<ポイント>
◆住宅宿泊事業法案が閣議決定、今国会で成立、来年1月施行か
◆住宅宿泊事業者としての登録が必要。年間宿泊日数は180日以下
◆住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者も新設される

民泊サービスに関する「住宅宿泊事業法案」が3月10日、閣議決定されました。政府は今回での成立をめざし、早ければ2018年1月にも施行とされています。その概要をみていきます。

法案は民泊を「住宅宿泊事業」という新たな法律用語で定義しました。
つまり、旅館業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業である、ということです。しかも、宿泊日数が1年間で180日を超えないものとされています。

ここでいう住宅とは、台所、浴室、トイレ、洗面設備などその家屋を生活の本拠として必要な設備が設けられていることが一つの要件です。
もう一つの要件は、現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間満了後新たな入居者の募集が行われている家屋など、人の居住の用に供されていると認められるものであることです。
つまり元々がホテルや旅館として建てられた建物ではなく、まさしく「住宅」でなければならない、ということです。
宿泊日数に関しては、各業界の代表者もメンバーであった政府有識者会議でも議論がありましたが、1年間で180日を超えないものとされました。
この年間の宿泊日数の計算の仕方は、今後、省令で定められることになっていますが、例えば1泊2日の宿泊者であれば、宿泊自体が1日おきでも、年間通じてほぼ毎日稼働していることになりそうです。
「半年ならばビジネスとして成り立たない」という意見もありましたが、それならば、旅館業法上の「簡易宿所」の許可を得るか、あるいは東京都大田区、大阪府(34市町村)・大阪市、北九州市の特区を利用するということになるでしょう。
特区に関しては制度開始当初は、(各宿泊客の)宿泊日数が6泊7日以上でなければならないという制限があり、使い勝手がよくなかったのですが、昨年の法改正により、2泊3日以上でもよいことになりました。
したがって特区の有無によって地域で異なりますが、住宅宿泊事業、特区、簡易宿所ないしこれを含む旅館業一般との間で、顧客のニーズに応じた「棲み分け」が進むであろう、という意見に私は賛成です。
ただ、地域の実情を反映し、条例によって宿泊日数等につき制限を設けることが認められているので、この点で「骨抜き」になるのではないか、との懸念もあるようです。

そして住宅宿泊事業を営む者は、都道府県知事(または保健所を設置する市・特別区)への届出が必要です。
届出をすることで「住宅宿泊事業者」として事業ができるようになり、行政の監督を受けることになります。
これまで簡易宿所の許可も得ず、特区の届出もせずに事実上広がっていた民泊に関しては、新法施行後は、新法所定の届出も、その他の許可等もなければ、違法営業であることがハッキリします。
その線引きをして、違法業者の営業を止めさせ、適法な事業者を監督を及ぼして適正な運営を確保するのもこの新法の目的と考えられます。

ここで住宅宿泊事業者は、届出住宅について、床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃をしなければならず、また非常用照明器具の設置、避難経路の表示灯を講じなければなりません。
また外国人観光客たる宿泊者に対しては、設備の使用方法について外国語を用いた案内、移動するための交通手段に関する外国語を用いた情報提供を講じなければなりません。
宿泊者名簿を備え、宿泊者の氏名、住所、職業等を記載し、行政の要求があれば、これを提出しなければなりません。
また騒音防止のために配慮すべき事項について説明しなければならず、周辺地域の住民からの苦情問い合わせにも適切かつ迅速に対応することが義務付けられます。

そして、これらの管理業務(住宅宿泊管理業務)を住宅宿泊事業者自身が行えないときは「住宅宿泊管理業者」に委託することが義務付けられています。
住宅の居室の数が一定の数を超えるとき、人を宿泊させる間不在となるとき(家主不在型)がそうです。
住宅宿泊管理業者については国土交通大臣の登録を受けなければならないものとされています。5年ごとの更新が必要です。
住宅宿泊管理業者は、信義誠実に業務を行わなければならない、自己の名義を以て他人に住宅宿泊管理業を営ませてはならない、その他、広告、勧誘、契約に関し、あるいは再委託の禁止など種々の規制があります。
国土交通大臣の監督を受けます。

そして、インターネットなどで民泊、すなわち住宅宿泊の仲介業を営む者は、観光庁長官の登録を受けなければなりません。5年毎の更新が必要です。
登録を受けた事業者を「住宅宿泊仲介業者」といいます。かかる事業者についても、住宅宿泊管理業者と同様、あるいは、独自の規制があります。
観光庁長官の監督を受けます。

先に違法営業がハッキリすると書きましたが、届出なしに民泊、すなわち住宅宿泊事業を営んだ者は、1年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金またはその両方が科されます。
したがって現在、特段の許可も届出もなく事実上民泊を実施している人は、大いに注意しておく必要があります。新法案の内容を精査し、これへの対応を今からしておく必要がありそうです。