株主総会における役員の報酬開示について
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2010年6月の上場会社の定時株主総会が終わりましたが、ソニー、日産自動車などが1億円以上の役員報酬を受けている役員の氏名や報酬額等を株主総会で明らかにしたということです。

上場会社は事業年度終了後3カ月以内に有価証券報告書を金融庁に提出しなければなりません。この有価証券報告書の記載内容を定めている「企業内容等の開示に関する内閣府令」(開示府令)が2010年3月に改正・施行され、1億円以上の役員報酬を受けている役員がいる場合には、その氏名と報酬の種類ごとの額を有価証券報告書に記載しなければならなくなりました。
一方、株主総会の招集通知の記載内容を定めている会社法は、1億円以上の報酬を受けている役員名や報酬額等を招集通知に記載することを義務付けていません。
同様に会社法では、株主総会で株主が1億円以上の報酬を受けている役員名や報酬額等を質問した場合に、これに対して回答することも義務付けていません。
しかし、上記のソニーなどの会社は、有価証券報告書で明らかになることをあえて隠すメリットはないと判断して、株主総会での株主の質問に回答したようです。また、その他の1億円以上の報酬を受けている役員のいる会社でも、その多くは株主総会で質問があれば答えるという方針をとっていたようです。

資生堂は、株主総会の招集通知に代表取締役2名(1名の役員報酬は1億円以下でした)と取締役1名(役員報酬は1億円以上でした)の個別の報酬額等を記載しました。
しかし、新聞報道でみる限りは、資生堂を除いて2010年6月の定時株主総会で招集通知に役員の個別の報酬額等を記載した上場会社はなかったようです。また、報酬額が1億円以下である役員の個別の報酬額等を開示している会社はほとんどありません。
そのため、役員ごとに報酬額等が開示されないことに不満をもつ株主が、すべての役員の報酬額等を招集通知や有価証券報告書に記載するよう定款で定める定款変更議案を株主総会で審議するよう要求することがあります。
2010年6月の定時株主総会でもこのような株主提案による定款変更議案を審議した上場会社が何社かあったようです。しかし、このような定款変更議案は可決されていないようです。

新聞報道では役員の報酬額が多く話題になりましたが、開示府令では役員報酬額の算定方法があれば、それも有価証券報告書に記載しなければならないことになっています。
現在、上場会社の多くが業績連動型報酬制度を導入しているということです。そのような会社は、2010年6月の定時株主総会終了後、報酬額の算定方法を記載した有価証券報告書を提出しています。
資生堂は招集通知に役員報酬の算定方法を記載しました。しかし、資生堂を除き、株主総会で役員の個別の報酬額等を開示した会社でも役員報酬の算定方法を明らかにはしてはいないようです。株主から役員報酬の算定方法についての質問がなかったのかもしれません。
しかし、役員報酬については、金額よりもむしろ合理的な根拠により算定されているかどうかの方が重要な問題ともいえます。今後は、役員報酬の算定方法についても株主総会で株主から質問されるようになるのではないかと思います。