役員給与を変更する際の税務上の留意点
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法人がその役員に支給する給与は、金額の設定に恣意性が介入し、利益操作に利用される可能性があるため、法人税法において諸規定がおかれています。
具体的には、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与として、予めその支給方法等を定めているものでなければ損金算入が認められません。
一方で、現在の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための休業要請等により、期中に業績が悪化し、役員給与の減額が避けられないことも想定されます。その場合、一定の要件に基づき変更したものについては、損金として認められます。
本稿では、役員給与のうち役員報酬及び役員賞与について、各事業年度の損金に算入される要件等を整理するとともに、期中の業績悪化により改定できるケースを確認します。

1.定期同額給与
定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとであり、かつ、その事業年度内の各支給時期における支給額が同額であるものをいいます。ただし、次に掲げる改定があった場合も定期同額給与に該当するものと取り扱います。
(1)通常改定
会計期間開始の日から3か月以内にされた改定(ただし、3か月経過後にされることについて特別の事情があると認められる場合にはその改定の時期にされたもの)
(2)臨時改定事由による改定
役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情によりされた改定
(3)業績悪化改定事由による改定
その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりされた改定(減額改定に限る)
これについて、具体的には以下のような場合が考えられます。
①株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
②取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合
③業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合

新型コロナウイルス関連のケースに当てはめると次のような場合が考えられます。
・休業要請や自粛要請等により、売上が著しく減少し、家賃や従業員等への支払も困難な状況にある場合、資金繰りが立ち行かなくなり、株主や金融機関との関係からも役員給与を減額せざるを得ない状況にあると考えられるため、業績悪化改定事由に該当することとなります。
・現状では売上などの数値的指標が著しく悪化していない段階であっても、外食産業や観光産業など、人や物の動きが停滞し、近い将来その影響を受けることが明らかであると考えられ、その回復の見通しが立たないと想定されるような場合には、現時点において経営環境は著しく悪化していると考えられるため、業績悪化改定事由に該当することとなります。

2.事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与をいい、次に掲げるそれぞれの届出期限までに所轄税務署にその事前確定届出給与に関する定めの内容に関する届出をする必要があります。
(1)原則
次の①又は②のいずれか早い日(新設法人の場合は設立の日後2か月以内)
①その支給を決定した株主総会等の決議日から1か月以内
②会計期間開始の日から4か月以内
(2)役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更等により、その役員について当該支給に係る定めをした場合
次の①又は②のいずれか遅い日
①(1)①又は(1)②のいずれか早い日(新設法人の場合は設立の日後2か月以内)
②その変更等が生じた日から1か月以内
(3)事前確定届出給与に関する定めを変更する場合
既に上記(1)又は(2)の届出をしている法人がその内容を変更する場合で、その変更が次の①又は②の事由に基因するときは、それぞれに定める日
①臨時改定事由
 その事由が生じた日から1か月以内
②業績悪化改定事由
 その定めの変更を決定した株主総会等の決議日から1か月以内
業績悪化改定事由として認められる場合も、1.定期同額給与で述べたような場合と同様で、事前に届け出た時期を先延ばしにしたり、金額を減額したりすることが可能です。
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