平成13年度商法改正について
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【商法改正】
商法が大きく改正されます。
平成13年6月29日に公布された「商法等の一部を改正する等の法律」が平成13年10月1日より施行させることになりました。
主たる改正点は、単位株を廃止して単元株制度をつくったことと、会社の自己株式の取得(いわゆる金庫株)が大幅に容易になったことです。以下に詳しく述べます。
なお、今回の改正では、社外取締役の義務付け、取締役の賠償責任を報酬の2年分までにすることは見送られており、今後の改正作業に委ねられることになっています。

【単元株制度の新設】
昭和56年より、それ以前に設立された上場会社については、単位株制度が強制されるようになりました。
単位株制度とは、株主代表訴訟を起こしたり、株主総会での議決権を行使する等の株主権の行使は1単位(大多数の上場会社の株式は1000株を1単位としています。)以上の株式がないとできないことになり、証券取引所での株式の売買も1単位ごとに行われるようになった制度です。
これは、昭和56年の商法改正で1株の最低金額が5万円に引き上げられたことにともない、それまでに額面が5万円以下である株式は、原則として、5万円を額面で割った数を1単位とすることになりました(額面50円の株式は1000株が1単位となります。)。
この規定は商法の本文ではなく、商法の附則に書かれています。
このような単位株制度については、1株1万円の株式で1000株を1単位とする場合、売買には1000万円が必要となり、到底、一般の人が購入できる金額ではなくなります。
このようなことでは、国民の株式市場への参加ができず、株式市場が活性化されません。このため、単位株制度が抜本的に見なおされることになりました。
今回の改正では、「単位株」にかわって「単元株」という制度ができました。
単位株が5万円を額面で割った数を1単位とするのに対して、単元株は会社が定款により1単元の株式数を決めることができるようになったものです。
といっても制約はあり、1単元の株数は1000もしくは発行済株式の総数の200分の1に当たる数を超えることができないことになっています。
単元株は、売買の単位となるだけでなく、議決権の単位ともなります。つまり、単位株制度では1単位以上もっていれば、持ち株数が議決権の数となったのですが、単元株では1単元ごとに1議決権となりますので単元未満分は切り捨てられることになります。
一方で、株主代表訴訟については、単位未満しかもっていなかった株主は訴訟を提起することができなかったのですが、単元株制度のもとでは、解釈上は、1株の株主でも可能だということになります。
それは、商法では6ヶ月前より株式を有する株主が代表訴訟を起こせることになっていますが、単位株制度のもとでは上記の附則によりその権利が制限されてきました。
しかし、単元株制度になって、この附則は削除され、原則にもどることになったものと考えられるからです。
単元株制度では定款で1単元を定めることになっていますが、附則により、特に異なる定めをしなければ、従前の1単位を1単元とみなすことになっており、定款変更の手間を避けることができます。

【自己株式取得が原則自由化】
自己株式の取得は、資本充実、維持の原則(会社が資本金に相当する財産を現実に保持しなければならないという原則)により、従来は厳しく制限されてきました。
会社が自己株式を取得すれば、有価証券として貸借対照表の資産の部に記載され、資本の部も減らないことになりますが、自己株式の取得は資本金の払戻しと考えられ、また、会社を清算するときには、資産の部からも資本の部からも自己株式分が取り除かれ、貸借対照表通りの資本が残らないことになるからです。
しかし、自己株式の取得を厳格に制限すると会社の自由な資本政策が妨げられるとして、徐々に緩和されてきました。
その中で最も重要な改正は、平成9年の商法改正によるストックオプションのための自己株取得と同年の株式償却特例法による株式償却のための自己株取得でした。
ストックオプションのための自己株式の取得は、取締役及び従業員に株式を譲渡するために発行済み株式総数の10分の1を超えない範囲で自己株式を取得できるというものです。
また、株式償却のための自己株式の取得は、定款で定められた株式数の範囲内で、利益償却の目的で自己株式の取得ができるというものです。
ただ、これらの改正によっても、特定の目的のための自己株取得が許されただけで、機動的な資本政策という点での手当ては全く不十分でした。
今回の改正では、抜本的に制度を改めて、定時株主総会の決議があれば、余剰の利益により自由に自己株式を取得できることになりました。
また、子会社の有する自己株式については、取締役会の決議だけで取得が可能になりました。
さらに、取得した自己株式の処分については取締役会の決議により可能です。