少額減価償却資産の特例
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少額減価償却資産の特例

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例が平成32年まで延長されています。この特例は中小企業に係る税務の極めて初歩的なものであるにもかかわらず、正確な認識がなされていない面もあるため、本稿で再確認をします。

(1)特例の概要
中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産について、事業供用した事業年度に、その全額を損金算入できるというものです。適用を受けるためには、その事業年度において、取得価額の全額を消耗品費等の費用として経理し、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要があります。なお、一事業年度において、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの少額減価償却資産の取得価額の合計額が限度となります。
(2)適用対象法人
青色申告法人である中小企業者又は農業協同組合等で、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人です。
中小企業者とは、次の法人をいいます。
①資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ただし、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人及び同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除きます。
②資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
これらの要件は、中小企業者に適用される他の特例においても多くが共通します。

(3)多制度との比較
法人税においては、少額減価償却資産について、本特例のほか、次のようなケースもあります。

見落としがちなのが、償却資産税の扱いです。本特例は30万円未満の減価償却資産が一括で損金算入できる一方で、償却資産税は課されます。
逆に一括償却資産の場合は、3年間で損金算入となりますが、償却資産税は課されません。20万円未満の資産の取得が毎期経常的に行われるのであれば、毎期の損金算入額は平準化し、償却資産税の課税を踏まえると、結果として本特例よりも一括償却資産の損金算入の方が有利であると考えられます。
また、欠損金を生じているケースでは、本特例を使わない方がより損失の繰越期間を長くすることができ、本特例が必ずしも有利とはいえません。

(4)その他
①本特例は、研究開発税制を除き、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできません。また、取得価額が10万円未満のもの又は一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるものについてもこの特例の適用はありません。
②本特例は、取得価額が30万円未満である減価償却資産について適用がありますので、器具及び備品、機械・装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウェア、特許権、商標権等の無形減価償却資産も対象となり、また、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産であっても対象となります。