労働条件の変更
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大阪市の財政が悪化するなか、市職員への厚遇が過剰ではないか、との世論の批判を受け、市職員への福利厚生・手当を年間180億円削減する案をめぐり、大阪市と市労働組合連合会が労使交渉を続けています。
組合側は、一部の手当の削減には同意しているものの、おおむねの削減案には強く反対したこともあり、大阪市職員への厚遇に対しては、市民の強い反発があります。
テレビなどでは、協議を重ねていることをとらえて、「大阪市は何をやっているのか。交渉など必要ない。」といった強硬意見を耳にすることもあります。
しかし、一般に、いったん定まった給与や福利厚生などの労働条件を話し合いなしに簡単に変更できるのでしょうか。
今回は、一般の企業の場合の労働条件の不利益変更について、法律関係を説明したいと思います。
労働条件とは、労働契約関係における労働者の待遇のいっさいをいいます。労働条件は、労働者と使用者の合意によって定められます。労働条件を切り下げることを、労働条件の不利益変更といいます。
一般の企業の場合、労働条件の変更は、就業規則の変更や労働協約の締結による場合、いずれの方法にもよらない場合があります。
就業規則により不利益変更する場合は、労働者の既得権を奪うことになるので、原則として労働者の同意が必要ですが、集団的・統一的処理のために合理性があれば、就業規則の変更により一律に労働条件を切り下げることが可能です。
合理性の判断基準は、変更する業務上の必要性、代償措置、ある特定の層のみ損をしないか、不利益の程度、同業他社との比較、など多岐にわたります。
そのため、ある労働条件の不利益変更が、のちに裁判において、合理的であるとされるどうかの判断は、難しいケースが多いといわざるをえません。
なお、手続的には、労働者代表の意見を聴取して、その意見書を添付して労基署に届け出ることも必要です。
労働協約とは、労働組合と使用者側の約束のことですが、これによって、全ての労働者に不利益変更の効力を主張できるかは、難しい問題です。
非組合員には、原則として労働協約の適用はありません。
ただし、労働協約を締結した労働組合での組織率が4分の3以上である場合には、特段の不合理がない限り、原則として非組合に対しても効力が及ぶとされています。
労働条件は合意によって決められるのが原則ですので、一方的な変更というのは難しく、まずは、合意を得るよう努力することになります。
ただし、合理的な条件変更について、話し合いを重ねたのに、相手が応じない、ということであれば、一方的に変更したうえ、争いが生じた場合は、変更の合理性について司法の判断を仰ぐほかありません。