労働安全法が改正されました
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<ポイント>
◆改正により企業の安全配慮義務が変化
◆項目により施行時期が異なることに注意
◆ストレスチェックの実施義務が最重要

労働安全衛生法が改正され、2014年6月25日に公布されました。
今回の改正は、化学物質などによる健康被害が問題となった胆管がん事案の発生や、精神障害を原因とする労災認定件数の増加など、最近の社会情勢の変化や労働災害の動向に対応し、労働者の安全と健康の確保対策の充実のためになされたものです。
これにより、企業に課される安全配慮義務が変化し、企業が法の遵守を怠った場合に企業の安全配慮義務違反による責任が問われる可能性が増えたといえます。
改正項目は7項目あり、項目ごとに施行時期が異なりますので注意が必要です。

1 化学物質についてリスクアセスメントの実施が事業者の義務になります(2018年6月までに施行予定)
一定の危険性・有害性が確認されている化学物質による危険性または有害物質の調査(リスクアセスメント)の実施が事業者の義務となります。
事業者には、リスクアセスメントの結果に基づき、法令で定める措置を講ずる義務があるほか、労働者の危険または健康障害を防止するために必要な措置を講じることが努力義務となります。
リスクアセスメントの具体的な実施時期、実施方法等は、別途定められることとなっています。

2 ストレスチェック制度が創設されました(施行日2015年12月1日)
精神障害の労災認定が増加していることから、企業が労働者の精神不調を把握するほか、労働者自身にもストレスへの気づきを促し、原因となる職場環境の改善へとつなげるため、労働者に対し医師・保健師等によるストレスチェック(心理的な負担の程度を把握するための検査)を実施することを事業者に義務づけることになりました。
ただし、従業員50人未満の事業場については、当分の間、努力義務としています。
ストレスチェックを実施した場合には、検査結果を通知された労働者の希望に応じ医師による面接指導を実施し、その結果医師の意見を聞いたうえで、必要に応じて、時間外労働の制限、作業の転換等について適切な就業上の措置を講じるなどの義務が課せられます。
ここではストレスチェック制度の詳細については述べませんが、この改正により、企業がストレスチェックの義務を怠ったり、その後の事後措置を怠ったりした場合には、安全配慮義務違反が強く推認されることになると思われるため、法的義務が課されている事業者は本改正については特にすみやかに対応する必要があります。
  
3 受動喫煙防止措置が努力義務となりました(施行日 2015年6月1日)
受動喫煙の法的規制については健康増進法により一般的な国民の健康の増進を図ってきたのですが、労働者と事業者との関係については、受動喫煙についての定めはありませんでした。
そこで、受動喫煙を防止するため、事業者および事業場の実情に応じ、適切な措置を講ずることを事業者の努力義務としました。
かつ、国が労働者の健康の保持増進に関する措置の適切かつ有効な実施を図るため、受動喫煙の防止のための設備の設置の促進その他の必要な援助に努めるものとしています。
具体的な国による支援措置としては、中小企業主に対する助成金として上限200万円として喫煙室設置のための費用の2分の1を支給する制度があります。
また、受動喫煙防止対策に関する無料相談窓口を設けて、専門家による電話相談、実地指導、説明会等の実施を無料で行っています。さらに、タバコ煙の濃度等を検出する測定機器の無料貸出しを実施しています。

4 重大な労働災害を繰り返す企業に対し、大臣が指示、勧告、公表を行う制度が導入されました(施行日 2015年6月1日)
同様の重大な労働災害が同一の企業において別の事業場で繰り返し発生する事案が散見されることから、同一企業内において、安全衛生関係法令に違反し、同様の重大な労働災害が繰り返し発生し、かつ、労働災害が繰り返し発生したあとも企業として改善に取り組んでいないと認められる場合には、厚生労働大臣が企業に対し「全社的な改善計画」の作成を指示する制度を創設しました。
そして、改善計画が適切でないと認められる場合には、大臣が計画の変更を指示することができることとしています。
企業が改善計画の作成指示や変更指示に従わない場合や計画を実施しない場合には勧告を行い、勧告に従わない企業については企業名を公表できることとしました。

5 規模の大きい工場等で建設物、機械等の設置、移転等を行う場合の事前届出義務が撤廃されました(施行日 2014年12月1日)
技術水準の向上により事前の届出義務を課さずとも安全性の確保が達成可能と判断し、届出義務を撤廃しました。

6 特に粉じん濃度が高くなる作業に従事する際に使用が義務付けられている電動ファン付き呼吸用保護具が型式検定・譲渡制限の対象に追加されました(施行日 2014年12月1日)
粉じんによる健康被害の防止のために規制を強化したものです。

7 外国に立地する検査機関の登録を可能にしました(施行日 2015年6月1日)
世界的に貿易の障壁撤廃の動きが進むなかで、外国での検査機関についても登録を受けることを可能とし、外国で製造された機械を輸入する際に2重の検査をうけなくともよいようにしました。