労働基準法の改正について
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【労働基準法の改正】
平成15年7月、改正労働基準法が公布され、来年の1月1日から施行されることになりました。

【改正の理由】
現在我が国では、少子高齢化が進み労働力人口が減少する一方、経済の国際化、情報化等の進展による産業構造や企業活動の変化、労働市場の変化が進んでいます。
また、近年の厳しい雇用情勢のなか、労働条件や解雇をめぐる紛争が多数生じています。
このようななか、
(1)労働者ひとりひとりが主体的に多様な働き方を選択できる可能性の拡大。
(2)働き方に応じた適正な労働条件が確保され、紛争解決に資するルールの整備。
の2つの要請から今回労働基準法が一部改正されました。

【改正の内容1 有期労働契約に関する改正】
1 最長期間の延長(原則1年から3年へ)
期間の定めのある労働契約については、これまで労基法14条によって、契約期間は原則として最長1年とされていました。
例外として、(1)新商品・新技術の開発等のための業務や新規事業への展開を図るためのプロジェクト業務に必要とされる高度の専門的な知識、技術又は経験を有する者が不足している事業場において、当該業務に新たに就かせるために締結する労働契約や(2)満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約については、契約期間の上限が3年とされていました。
しかし、今までの1年を限度とする契約では、再契約を繰り返すことにより、雇い止め(契約終了)の際、法律上解雇と同様の扱いを受けることになり、結果的に使用者が契約を終了しにくくなっていたため、使用者側としても有期契約労働者の雇い入れを行いにくかったという事情がありました。
そこで、有期契約労働者の多くが契約の更新を繰り返すことにより、一定期間継続して雇用されている現状があることから、有期労働契約が労使双方から良好な雇用形態の一つとして活用されるよう、今回の改正により、契約期間の上限を原則3年とすることにしました。
また、あわせて、(1)専門的な技術又は経験であって、高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当するものを有する者が、そのような専門的知識等を必要とする業務に就く場合と(2)満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約については、その契約期間の上限を5年とすることとしました。

2 暫定措置
なお、当面の間は、1年を経過した時点で、労働者側からの申し出によっていつでも退職できることができることになっています。

3 更新・雇い止めに関する基準
厚生労働大臣は、有期労働契約の締結時や有期労働契約の締結や期間満了時におけるトラブルを防止するため、使用者が講ずるべき措置について基準を定めることになりました。
また、労働基準監督署長は、この基準に関して、使用者に対して必要な助言や指導を行うことができることになりました。

【改正の内容2 解雇に関するルールの整備】
1 解雇ルールの明文化
近年、解雇をめぐるトラブルが増大しており、その防止・解決には、解雇に関する基本的なルールを明確化することが必要となっています。
この点については、最高裁の判決において基準は確立しているものの、これまであまり一般に知られていなかったため、解雇の制限が労働基準法に明記されることになりました。
すなわち、労基法18条の2として、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」との規定が新設されました。

2 解雇理由の明示
そして、解雇をめぐるトラブルを未然に防止し、その迅速な解決を図るために、これまでは退職時に証明が必要とされていただけだったのが、労働者は、解雇の予告をされた日から退職の日までの間においても、解雇の理由についての証明書を請求できることになりました。

3 就業規則への「解雇の事由」の記載
労使当事者間において、解雇についての事前の予測性を高めるため、就業規則に退職に関する事項として「解雇の事由」を記載することになりました。

【改正の内容3 裁量労働制に関する改正】
裁量労働制とは、労働者に時間配分や仕事の仕方を委ねた場合に、労使間であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度(みなし労働時間制)です。
裁量労働制には、(1)デザイナーやシステムエンジニアなど専門的な業務に就く者が対象となる「専門業務型裁量労働制」と(2)事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務を行うホワイトカラー労働者が対象となる「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

今回の改正では、「企画業務型裁量労働制」の導入・運用等についての手続が緩和され、対象事業場が拡大されました。
(1)導入にあたって必要とされていた労使委員会の決議について、以前は全員の合意が要件とされていたのが、5分の4以上の多数決となりました。
(2)労使委員会の労働者代表委員について、あらためて事業場の労働者の信任を得ることとする要件を廃止することになりました。
(3)労使委員会の設定届を廃止することになりました。
(4)使用者の行政庁への定期報告事項は、対象労働者の労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置の実施状況に限ることになりました。
(5)以前は本社等に限定されていた対象事業場が、無限定となりました。

また、「専門業務型裁量労働制」については、労使協定で定めるところにより、使用者が次の措置を講ずることを労使協定で定めなければならないことになりました。
(1)対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた労働者の健康・福祉を確保するための措置
(2)苦情の処理に関する措置