分譲マンションで電力供給を受ける方法について
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◆電力引き込みとして、個別契約の方式と高圧一括受電の方式がある
◆高圧一括受電への変更のために個別契約の解約申入れを義務づけても効力有せず

分譲マンションにおける集会や管理組合法人について述べてきましたが、マスコミによる報道などでご存じのとおり、2019年3月5日に、分譲マンションにおいて電力供給を受ける方法をめぐる最高裁判決が出ましたので、今回はその背景や判決について述べてみたいと思います。

背景についてですが、分譲マンションに電力を引き込む方法として次の方法があります。各区分所有者または居住者が電力会社と個別に契約を結ぶ方式と(供給電圧は低圧 100Vまたは200V)、管理組合が電力会社とマンション1棟または複数棟分の電力について一括して高圧の契約を結び、各戸へと低圧に変換して供給する高圧一括受電の方式です。
一般に、個別契約の方式よりも、高圧一括受電の方式の方が電気料金を抑えられるとされています。

以下、最高裁判決が出た事案について述べていきます。
ある団地管理組合法人の通常総会において、専有部分の電気料金を削減するために高圧一括受電の方式に変更する旨の決議がされました。そして後日の臨時総会において、電気設備に関する団地共用部分について規約を変更し、高圧一括受電方式以外の方法で電力の供給を受けてはならないことなどを定めた「電気供給細則」を設定する決議がされました。
高圧一括受電方式に変更するためには個別契約を結んでいる団地建物所有者や居住者(以下「団地建物所有者等」)は全員その解約をする必要があります。そこで総会決議を踏まえ、団地建物所有者等による個別契約の解約申入れがなされました。
ところが一部の団地建物所有者等Yらがその専有部分について個別契約の解約申入れをしなかったため、高圧一括受電の方式に変更できませんでした。そこで、他の団地建物所有者等Xが、その専有部分の電気料金が削減されないという損害を被ったとして、XがYらに対し、不法行為に基づく損害賠償請求をしたという事案です。

この事案について最高裁は次のように判断し、個別契約の解約申入れをしなかったとしても他の団地建物所有者等に対する不法行為を構成しないとして請求を棄却しました
(詳しくはhttp://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/462/088462_hanrei.pdf  をご参照ください)。
高圧一括受電方式に変更することとした総会決議のうち、団地建物所有者等に個別契約の解約申入れを義務づける部分は、専有部分の使用に関する事項を決するものであって、団地共用部分の変更や管理に関する事項を決するものではない。したがって、個別契約の解約申入れを義務づける部分は、効力を有するといえない。
また、「電気供給細則」が個別契約の解約申入れを義務づける部分を含むとしても、その部分は、区分所有者相互間の事項を定めたものでなく規約として効力を有するものではない。
最高裁は以上のように判断し、専有部分について電力会社との個別契約の解約申入れをしなかったとしても、他の団地建物所有者等との関係で不法行為を構成しないとして、損害賠償請求を棄却しました。

参考になれば幸いです。