公取委の審判制度の見直し

1月6日付け日経新聞は、公正取引委員会が独占禁止法違反で下した行政処分の是非を公取委自らが判断する審判制度を見直す方針を固めたと報じています。報道では、談合やカルテルは直接に裁判所で争える制度を検討し、不公正な取引方法などについては「事前審判制度」を採用する方向としています。昨年廃案となった独禁法改正案に審判制度の具体的な見直し策を盛り込んだ改正案を今通常国会に再提出し、2010年中の施行を目指しているとのことです。

現行の独禁法では、「私的独占」、談合やカルテルなど「不当な取引制限」、不当廉売、再販売価格の維持など「不公正な取引方法」の違反があったと認める場合、公取委は、同法の定める手続きに従い、その行為の差し止めなどの「排除措置命令」を出すことができます。
この命令に不服がある者は公取委に対して「審判請求」することができるという仕組みになっています。
この審判は「準司法手続き」と言われますが、公取委が出した排除措置命令について事後的に審査するもので、審判請求に理由があれば「審決」で命令を取り消しまたは変更し、理由がなければ「審決」で請求を棄却します。
この審決に不服があれば、公取委を被告として「審決の取消しの訴え」を東京高等裁判所に提起することになります。
談合やカルテルなどの「不当な取引制限」に課される課徴金納付命令についても同じ道をたどることになります。

この審判手続きについては経済界から廃止が求められています。
例えば日本経団連の2007年11月20日付け「独占禁止法の抜本改正に向けた提言」では、「自ら審査を行い、排除措置命令・課徴金納付命令を下した公正取引委員会が、自ら行った行政処分の当否を自らの審判において判断する構造の下では、公正な審理の確保に関する不信感は払拭され」ない、「海外主要国の競争当局との比較においても日本にしか見られない制度」と批判しています。

今回の審判制度の見直しの方向はこのような声を考慮したものと考えられます。
では、直接に裁判所で争える制度とは何かというと、これは前記提言にもあるように「公正取引委員会の行政処分に対する不服申立ては行政訴訟の一般原則に立ち返って、地方裁判所に対する取消訴訟の提起により行う仕組み」になると考えられます。
つまり、行政機関が行った処分に不服があるものは、その取り消しなどを求めて裁判所に対して行政訴訟を提起することになります。課税処分を不服としてその変更を求める税務訴訟はその典型です。行政機関としての公取委が行った排除措置命令や課徴金納付命令に対しても、一般原則(行政事件訴訟法)にしたがって、取消訴訟を提起して争う仕組みとすべきである、という方策が考えられます。
ただ、今回の見直しでも前記のとおり「不公正な取引方法」についてまで審判を全面廃止するわけではないようです。
具体策はまだ公表されていませんが、その内容に注目したいと思います。