債権法改正について(法定利率)
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<ポイント>
◆改正当初の法定利率は3%だが3年毎に変動する
◆法定利率を用いる場合の基準時が定められた
◆中間利息控除について明文が設けられた

2020年4月1日に施行される民法改正(いわゆる債権法改正)について説明します。今回取り上げるのは、法定利率についてです。

1 法定利率の変動
改正前民法において法定利率は5%とされ、例外的に商行為によって生じた債務の法定利率は6%とされていました。
しかし、これらの法定利率については市場の金利との乖離が大きいこと、法改正がない限り市場を反映して利率が変動されないことに批判がありました。
そのため、民法改正により新法施行時の法定利率は3%とされ、その後3年ごとに法定の方法で法定利率が変動しうることになりました。商行為によって生じた債権の法定利率についても同様に扱われます。
細かな計算方法は省略しますが、法定利率の変動にあたっては、所定の期間内の銀行の短期貸付けの平均利率を参照することで、市場の金利を反映する仕組みになっています。

2 どの時点の法定利率が適用されるか
法定利率が変動するので、利率について約定のない利息や金銭債務の遅延損害金を算定するにあたってはどの時点の法定利率が適用されるかに注意しなければなりません。
利息が生じる債権の利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率で確定し、その後に法定利率が変動した場合でも利率は変動しないと定められました。
また、金銭債務の遅延損害金の利率についても、債務者が履行遅滞責任を負った最初の時点における法定利率で確定すると定められました。
法定利率が一定の時点で確定するとはいえ、利息や遅延損害金について予測を立てやすくするために、これまで以上に利率を約定することが望ましいと思われます。

3 中間利息控除
中間利息控除とは、損害賠償額を算定するにあたり、将来の逸失利益等を現在価値に換算するために、損害賠償額算定の基準時から将来利益を得られたであろう時までの利息相当額(中間利息)を控除することをいいます。
この中間利息を算定する際の利率については改正前民法には規定がなく、判例で法定利率によるものとされていました。
改正民法下では法定利率が変動するので、中間利息の利率については、損害賠償請求権が生じた時点における法定利率を適用するものと定められました。
現在中間利息控除において利用されているライプニッツ係数やホフマン係数は法定利率が5%であることを前提にしたものなので、改正民法施行後は利用できなくなることに注意しなければなりません。
中間利息の利率が下がることで影響が大きいのが損害保険の分野で、特に人身事故における損害賠償額は全体的に高額になる見込みです。賠償額が高額になることで、損害保険料が増加することも予想されます。