偽装請負問題について
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最近、新聞やテレビなどで「偽装請負」という言葉を見かけるようになりました。
2005年度に全国の労働局が是正指導した偽装請負の事案は過去最多の974件に上っています。
「偽装請負」とは、製造業の企業等が他の会社から実質的には労働者の派遣を受けているのに、派遣契約を結ばずに、他の会社がその業務を請負っているという形をとり、実際には、派遣された労働者を直接指揮命令し、業務に従事させることです。

そもそも、「請負」とは、請負会社の労働者が、発注者や委託者の指揮命令を受けることなく、雇用主である自社のみの指揮命令を受け、自社の業務として、自社の労務指揮下に、自社のために、請負先で就労するものです。
この点で、派遣した労働者の指揮命令権が、派遣先に移転する「労働者派遣」とは異なるのです。

では、実際には、この両者は企業にとって、どのようなちがいがあるのでしょうか?
「労働者派遣」の場合には、労働者派遣法の規制を受け、派遣先の企業は、安全管理義務を負うほか、派遣労働者が一年以上同じ企業で勤務すると労働者に直接雇用を申し入れなければならず、コスト負担が企業側に大きな負担となってくるのです。
一方、典型的な請負契約であれば、安全管理は請負事業者の責任であり、かつ、正社員雇用のコストをかけることなく、継続的に安い労働力を使うことができるというメリットがあります。

しかし、自社の設備・機械を利用させて、直接請負業者の従業員に対して指揮命令を行い、自社の事業に従事させていれば、契約の名称が請負であっても、本来の請負ではなく、典型的な「偽装請負」で労働者派遣法に違反します。
「偽装請負」に対しては、「是正命令」「事業改善命令」「事業停止命令」などの行政処分がなされます。
「偽装請負」を行っている企業は、労働災害が発生した場合に、その調査のために行政が立入調査することにより、偽装請負の実態が発覚することをおそれて、労働災害の発生自体を隠す「労災隠し」をする可能性が高まるという危険性が指摘されており、労働局としては、今後も、偽装請負の調査を強化していくと思われます。