借入金がサービサーに譲渡されたら
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銀行は今不良債権処理に大わらわです。経営に不安のある企業にとって、借入金が銀行によってどのような処遇を受けるか戦々恐々です。
銀行は不良債権処理の方法の一つとして、サービサーへ債権を売却することがあります。その場合は事前に銀行から連絡があるのが普通ですが、「当行が貴社に対して有している債権を〇〇〇株式会社(サービサー)に譲渡しました」という内容証明郵便を受け取ることになります。
「サービサー」というのは、銀行がもつ不良債権を買い取るなどして、債権回収を行うことを専門とする認可に基づく企業です。債権回収が裏社会の利権につながることを防止するため、資本金・役員構成などに規制があります。あらゆる手段で債務者を攻撃する「取立屋」ではありません。
サービサーは、通常銀行がもっている貸付債権を一まとめにして、いわゆる「バルク買い」の方法で買い取ります。通常10億円程度にまとめられ、入札で売買されます。その中には、担保処分によってある程度の回収が見込める債権もあれば、無担保でまったく回収の目途が立たない、いわゆる「裸債権」も混じっています。従って、サービサーの債権買取価格は額面より極端に低くなるのが普通です。
しかし、債権を譲り受けたサービサーは、債務者にとりあえず元の債権額全額の返済を要求します。そのうえで、債権の買値(原価)や相手方(債務者)の状況をにらみながら、大幅な減額交渉に応じたり、低い金額での一括返済・残債権放棄、という形で早期決着をはかります。
例えば、1億円の債権が300万円の返済で決着することも珍しくありません。その債権の買い取り値が仮に100万円であったとすれば、それでもサービサーは大きな差益を得ることができるからです。
担保や第三者の保証がついている場合は極端な低額決着は難しいかもしれません。それでも、サービサーにしてみれば、買値(原価)より回収額が多ければそれで満足できるのですから、債務者としては十分交渉の余地があります。
担保物件を早急に処分する、保証人も多少まとまった資金を用意して一括返済する、などを提案すれば、案外スムースにサービサーとの交渉が妥結する可能性があります。
借入金が元の銀行にある間はなかなか減額交渉等が進展しなかった場合でも、サービサーに債権譲渡されたことによって、かえって解決が早まるということもあり得ます。
サービサーが認可に基づく健全な企業であることと考え合わすと、サービサーに債権が譲渡されても、債務者はことさら不安や恐怖感を抱く必要はなく、むしろ過剰債務を処理する好機ととらえることもできます。
逆に、このようなサービサーの業態に無知で、ある種の不安からはじめから弱気な返済交渉にのぞむのは債務者にとって得策ではありません。