会社役員の冠婚葬祭と税金
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会社行事として役員の冠婚葬祭に関与する場合、税務上、どのような点に留意しなければならないかを以下にQ&Aによる具体例で検討してみます。

【冠】
Q
A社では、役員が還暦・喜寿等の時に、社内パーティを行い、会社が費用を一部負担していますが、税務上どう取り扱われますか。

A
還暦・喜寿・米寿等は極めて個人的なお祝い事であり、福利厚生と考えても役員だけでは機会均等に欠け、費用性があるとはいえません。
よって、会社が負担した費用は、その役員に対する給与(賞与)となり、損金にはなりせん。

【婚】
Q
B社の社長の長男である常務の結婚式・披露宴の費用について、参列者の6割が当社の役員や取引先等ということで、費用の6割相当額を会社で負担しました。
また、慶弔見舞金規程にしたがって、常務への結婚祝金を支払っています。
これらの費用は、どのように取り扱われますか。

A
1、役員の結婚式・披露宴の開催に関する費用の取扱い
税務上、結婚式・披露宴の費用は、役員である長男に対する給与であり、会社の交際費として取り扱うことはできません。
結婚式・披露宴は、私的な行事であって、役員個人が負担すべき費用です。
たとえ披露宴に会社の取引先等を招待していても、それは常務としての社会的立場によるものであって、結婚式・披露宴が会社の経営や業務を実施する上で必要な行事であるとまではいえません。
よって、会社の取引先等を招待したとしても交際費として取り扱うことはできません。
したがって、会社が支払った結婚式・披露宴の費用分担金は、常務に対する給与となりますが、定期同額給与ではないため、損金にはなりません。

2、役員への結婚祝金に関する取扱い
役員が結婚した時に結婚祝金を支給する場合は、慶弔見舞金規程に従っていれば、原則として福利厚生費として取り扱われますが、社会通念上不相当に高額な祝金は福利厚生費ではなく給与として取り扱われる場合がありますので、注意が必要です。

【葬】
Q
C社の創業者である社長が亡くなりました。
社長の会社に対する功労は極めて大きいので、社葬としました。
この場合の会社が負担した社葬に係る費用に関する税務上の取り扱いについて教えてください。
また、香典の取り扱いについてもお願いします。

A
1、社葬の原則的取扱い
社葬とはいっても、葬儀は本来、個人的な儀式ですので、その費用は遺族が負担すべきものです。
したがって、原則としては、社葬は会社から遺族に対する贈与として取り扱われ、遺族が会社関係者であれは給与(賞与)となります。

2、社葬が社会通念上相当と認められる場合の取扱い
死亡した役員等の死亡の事情、生前におけるその法人に対する貢献度合等を総合的に勘案して「社葬を行うことが社会通念上相当」かどうかが判断され、「社葬のために通常要すると認められる部分の金額」は、支出した日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。

3、「社葬に係る経費のうち通常要すると認められる金額」の判断
ここでのポイントは、明らかに遺族が負担すべき費用は認められないことです。
たとえば、密葬の費用、墓石、墓地、仏壇、位牌等の買い入れ費用、院号を受けるための費用、香典返戻費用、法会に要する費用などが、遺族が負担すべき費用とされています。
いわゆる会葬のための費用は損金の額とされます。

4、会葬者からいただいた香典の取扱い
香典等は、会葬者が遺族に対して哀悼の意を表して供えるものですから、遺族が受け取るのが社会一般の常識です。
よって、香典等を法人の収入とせず遺族の収入とした時は、これが認められます。

Q
D社の専務取締役が死亡し、遺族に退職弔慰金を支払いました。
課税関係はどうなりますか。

A
1、死亡退職金の取扱い
まず、退職弔慰金を退職金と弔慰金に区分して考える必要があります。
死亡退職金であれば、相続税法上は原則として相続人が相続によって取得したものとみなされ、所得税法上は非課税所得であり、退職所得に係る所得税の源泉徴収義務はありません。
死亡退職金を受け取られた遺族は、みなし相続財産として相続税の課税財産に加える必要がありますが、一定の金額までは非課税となります。

2、弔慰金の取扱い
死亡退職した役員の遺族に支払った弔慰金が、社会通念上妥当な金額(次の(1)または(2))であれば、税務上では死亡退職金とは別に支払い時に損金となります。
(1) 業務上の死亡である時・・・普通給与の3年分相当額
(2) 業務上の死亡でない時・・・普通給与の半年分相当額

【祭】
Q
E社の会長が業界の発展に長く尽くした功績により、叙勲を受けました。
これに伴って取引先を招待し祝賀パーティーを催し費用を一部会社で負担しましたが、税務上どう取り扱われますか。

A
叙勲とは、国家や社会に対する功労者を対象に国から勲章を授与されることをいい、本来個人的なものです。
しかし、会長の叙勲は会社のイメージアップになり、会社の対外的な信用を増す等の効果があるので、交際費としての費用性があります。
ただし、パーティーの規模が明らかに常識を超えて豪華であったり、会長の個人的色彩の強いものについては、賞与として取り扱われる場合もあります。