令和元年の会社法改正
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<ポイント>
◆1年6か月以内に施行。ただし電子提供制度については3年6か月以内に施行
◆株主提案の内容を理由とする制限については審議段階で削除された
◆新興市場の上場企業では社外取締役に欠員が生じた場合への備えが必要

先日閉会した臨時国会において会社法改正が成立しました。
多くの改正について施行時期は公布から1年6ヶ月以内とされ、具体的には今後政令で施行時期が指定されます。

主要な改正点の一つに株主総会資料の電子提供制度の導入がありますが、これについては公布から3年6ヶ月以内に施行されることとなっています。
実務的な準備のため新制度開始まで長めに準備期間をおくようです。
上場企業においては電子提供制度を一律に導入することとされ、施行日に所要の定款変更を行ったものとみなされます。
非上場会社も定款自治により電子提供制度を導入することができますが、こちらは実際に定款変更の手続きを行う必要があります。
なお、会社法改正に合わせ、他の法令との調整を行う整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)も改正され、一般社団法人の社員総会についても電子提供制度を導入できるようになっています。

また、株主総会についてのもう一つの改正点として、株主提案権を制限するルールの導入があります。
法案では、提案内容が濫用的であると会社が判断した場合に株主提案を取り上げなくともよいとする案が盛り込まれていましたが、会社側が恣意的な対応をする余地があることが問題となり、国会審議のなかでこの箇所は削除されました。
提案件数を議案10件までに制限する条項は残され、改正法として成立しています。

上場企業を念頭に、一部の会社に社外取締役選任を義務づける改正も成立しました。
改正の検討段階でミスリーディングな報道があったことは前にお知らせしたとおりです。
「会社法改正 社外取締役の選任義務化をめぐる一部報道に対して」ご参照)

コーポレートガバナンス・コードにより多くの上場企業がすでに社外取締役を選任済みである現状からすれば、改正による実際上のインパクトは大きくないでしょう。
ただ、マザーズ、ジャスダックなど新興市場に上場している会社では社外取締役が1名のみというケースもあります。万が一の事態で社外取締役を欠くこととなった場合、欠員が生じたままで適法に取締役会決議をなしうるか、解釈上の問題を生じます。
この場合の備えについては考えておく必要がありますが、補欠の社外取締役を選任しておくことが対策になります。