中古住宅と瑕疵担保責任
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<ポイント>
◆地盤を疑ってみる
◆地盤調査費用も売主に請求できる
◆契約書を見て瑕疵担保責任の期間を確認すること

マイホームは、多くの人にとって一生のうち最も高い買い物であり、生活の本拠ですので、住宅の売買・請負は、その後、紛争となりやすいものです。今回は、中古住宅売買に関する紛争のうち、比較的多いものをご紹介したいと思います。

中古住宅の買主からのクレームで多いのは、建具の建て付け不良、床の傾き、基礎のひび割れなどです。長い間居住していた売主にとってはあまり気にならないことでも、新しく入居する買主には気になるということがあります。原因を調べてみると、建具の建て付けや床の施工の不良にあるのではなく、地盤が軟弱で建物が傾いているということがあります。
買主としては、売主に対して、土地または建物に「瑕疵」があること(通常有すべき品質・性能を欠いていること)を理由に、瑕疵担保責任に基づく解除または損害賠償請求をすることが考えられます。
ここでいう土地の「瑕疵」とは、軟弱な地盤が存在することによりそのままでは宅地として利用できない状態を指し、建物の瑕疵とは、傾いている状態を指します。

地盤が軟弱かどうかを調べる方法として代表的なものが、スウェーデン式サウンディング試験です。これは、名前のとおりスウェーデンで生まれた調査方法であり、ドリル状のスクリューが先端についた棒状のものに重りを載せてハンドルを回し、地盤に貫入させて地盤の固さを調べるというものです。費用がそれほどかからないため、この試験が用いられることが多いです。

相談を受けていて、解除できるか否か聞かれることが多いですが、補修できるかどうかがポイントとなります。もっとも、技術的には補修できるとしても、その費用が売買代金を超える、または売買代金に近いのであれば、売主が買主に補修費用相当額を賠償することは、もはや売買代金を返還することと同じですので、「実質的にみて補修できない」として解除できる余地があります。ただ、補修費用が購入価格の6割以上かかる事例でも、技術的に補修できることを理由に解除を認めなかった裁判例もあり、なかなか解除のハードルは高いといえます。

解除できないとしても損害賠償請求は可能であり、地盤調査費用、建物の傾きの程度・原因・補修方法を調査するための費用、補修費用などを売主に請求できます。

なお、民法では、売主に瑕疵担保責任を追及できる期間は、買主が「瑕疵」の存在を知った時から1年間と定められていますが、これは特約で修正できます。例えば、一般社団法人不動産流通経営協会(略称 FRK)の会員である宅地建物取引業者による仲介のもと、一般人から中古住宅を購入する際には、FRKのひな形が売買契約書として用いられることが多いですが、その内容は、売主が責任を負うこととなる瑕疵の種類が限定され、期間も限定され(例えば、引渡し日から3ヶ月間)、売主の責任を緩和しています。
逆に、一般人からではなく宅地建物取引業者から不動産を購入するにあたっては、宅地建物取引業法で、要約すると「瑕疵担保責任の期間を引渡し日から2年以上とする特約をする以外には、民法の規定よりも買主に不利となる特約をしてはならない」と定められており、買主を保護しています。それゆえ、宅地建物取引業者から不動産を購入するときは、契約上、瑕疵担保責任を追及できる期間が引渡し日から2年間と定められていることが多いです。瑕疵担保責任を追及するにあたっては契約書の確認が重要です。