不当表示に関する最近の事例
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<ポイント>
◆「優良誤認」と「有利誤認」
◆合理的な根拠を示す資料の提出が求められる場合がある
◆一般消費者目線で考えなければならない

景品表示法に基づき消費者庁による措置命令が出された不当表示に関する事例を4件ご紹介します。

ところで不当表示には主に「優良誤認」と「有利誤認」とがあります。
「優良誤認」は品質、規格など内容についての表示を問題とします。
これら内容について、実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に相違して他の事業者のものよりも著しく優良であると示す表示であるのが特徴です。
これに対して、「有利誤認」は価格など取引条件についての表示を問題とします。
これら取引条件について、実際のものや他の事業者のものよりも、顧客からみて著しく有利であると誤認させる表示であるのが特徴です。

今年6月14日、家電量販店大手エディオンなど12社に対して措置命令が出されたのがLED電球に関するケースです。
商品パッケージなどで「白熱電球60W形相当の明るさ」などと表示されていましたが、実際には白熱電球と同等の明るさは得られなかったというものです。
消費者庁はこれを「優良誤認」事例として認定しました。
白熱電球の場合はほぼ全方向に配光されるのに対して、LED電球は(下向きに取り付けたとして)上方向と水平方向への配光が弱いものが多いようです。
したがって、LED電球をダウンライトとして使うのであれば、白熱電球と同じ明るさが得られるものの、部屋全体を照らす照明器具に使うならば、全ての方向に発せられる光の量が白熱電球と同等でない限りは、白熱電球と同じ明るさは得られないことになります。
私も少し前、あるホームセンターにて、欲しいワット数の表示を確認して、リビング用のLED電球を買いましたが、ひどく暗いと感じたことがあり、今回の消費者庁の判断を知り、大いに納得しました。
明るさについて別の測定方法をとれば、本件は全くの嘘ではないのかもしれません。ただ、一般消費者目線で考えないといけないことをよく示す例のように思えます。

6月28日、通信販売業者「クリスタルジャポン」、化粧品販売業者「コアクエスト」に対して措置命令が出されています。
対象となった化粧品「アゲハダラインゼロ」はメーカーからコアクエストが仕入れ、これをクリスタルジャポンが仕入れて、クリスタルジャポンのウェブサイトで広告販売していました。ウェブサイトでの表示は両社が共同して決めていたとのことです。
問題の表示は「気になるシワを一瞬で!?形状記憶」です。
消費者庁が景品表示法4条2項に基づき、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を両社に求め、両社は資料を提出したものの、いずれも合理的な根拠を示すものとは認められなかった、というものです。
その結果、「優良誤認」に該当する表示とみなされました。
化粧品や美容機器、そのほか「身長伸ばし」や「美顔矯正術」なるサービスなど、美容に関する商品・サービスに関して、多くの優良誤認の措置命令が出されています。これらの多くが消費者庁から合理的な根拠を示す資料の提出を求められ、何らかの資料を提出したものの、「合理的な根拠を示す」とは認められなかったというものです。
インターネットで広告販売されているものが多いのが特徴です。

また9月6日、桐灰化学、白元ほか1社に対して措置命令が出されたのは首冷却ベルトに関するケースです。
これは「熱中対策」などとして、冷凍庫で凍らせて首に巻き、冷却効果を得るという商品ですが、その効果が持続する時間はパッケージなどで「120分冷却 ※使用状況により変わることがあります。」(桐灰化学)などと表示されていました。
ところが、消費者庁が人を対象にして、あるいは人体のように放熱する「サーマルマネキン」で行った実験結果によれば、その半分ないし3分の2程度の持続時間しかなかったというものです。
桐灰化学の例でいえば、同社も実験をしていなかったわけではありません。
しかし、31度の室内で、人が静止して首にベルトを巻いた状態での結果を測定していたということです。これに対して消費者庁の実験は、8月の気象の平均値(湿度なども考慮)を室内で再現して、軽い運動を行うなどして測定していました。
現在既にこれらの表示は変更されているとのことですが、ここでも一般消費者目線で考えないといけないことがよく分かります。

9月10日に措置命令が出されたのは資格取得の講座を企画するアビバに対してです。
「日商簿記3級講座」、「医療事務合格パック」なる資格取得対策のサービスについて、折り込みチラシで「通常16,700円(税込)→9,800円(税込)」(日商簿記3級講座)などと表示していたものの、最近「通常」と称する価額で提供されたことはなかった、というものです。
「二重価格表示」に関するもので、消費者に対して、一見すると「お得」な印象をあたえることになります。つまり、実際や他社のサービスに比べて、著しく有利であると誤認させることになります。
このケースは明らかに不当表示であると思われますが、通常価格を一応設定しておきつつも、実際にはその通常価格が適用されることが全くない、あるいは稀になっているということはありうることのように思います。
企業としては法令順守を注意しておくべきポイントだと考えます。

なお、措置命令では、景品表示法違反であることを一般消費者に周知徹底し、再発防止策を策定して社内で徹底し、以後、同様の表示を行わないことなどが命じられます。