パートに残業手当
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厚生労働省は、パートや派遣、請負労働者などの残業に対しても割増賃金の支払を雇用者に義務づける新法案を来年の通常国会に提出する方針、とのニュースが流れました。これには一体どのような意味があるのでしょうか。
一般に、残業手当といわれる場合、通常の賃金を基準にし、最低でもその1.25倍の割増賃金を支払うことになっています。
しかし、現在の労働基準法では、週40時間の法定労働時間を超えない限りは、労働時間に応じて通常の賃金を基準に支払えばよく、割増賃金を払う必要はないことになっています。
正社員の場合は、そもそも労働協約や就業規則などで定められている労働時間(所定労働時間)が、40時間であるため(例えば、月曜日から金曜日までの1日8時間勤務であれば、週40時間になります。)、残業すれば法律により自動的に割増された残業手当がつくことになっています。
ところが、パート、派遣などの労働者の場合は、厚生年金への加入をさけるため、契約などにより所定労働時間を週30時間程度までに押さえていることが多いのです。
その結果、週40時間に達するまでの残業については、法律上、割増賃金を払わなくてもよいことになっていました。
結局、雇用者としては、労働者をパートとして雇用しつつ、実質的には正社員と変わらない勤務時間で、しかも、1時間あたりの賃金としては、割増コストなしに勤務させることが可能だったわけです。
このような法制度のもとでは、労働時間を短くして働きたい、というパート勤務者にとって、不利益をもたらすことになってしまいます。
パート労働者としては、パートであることのメリットがなくなってしまっていたのです。
そこで、新法案では、雇用者に対し、週40時間の法定時間内での残業であっても、全ての残業について割増賃金を支払うことを義務づけます。
それにより、雇用者側が、パートに残業をさせにくくするねらいがあるのです。この法案に対しては、産業界からの強い反発が予想され、成立に関しては予断を許しませんが、正社員かそうでないかという区分によって、労働条件の有利不利を解消していこうという大きな流れになっていることは間違いありません。雇用者側は、今後も、労働者の種別区分ではなく、労働内容に応じた処遇をするよう求められていくようになります。