FRAND条件に関する知財高裁大合議事件判決など

 井上 彰

2018年07月15日

<ポイント>
◆FRAND条件に関する知財高裁大合議事件判決・決定の紹介
◆特許庁による「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」の公表

1 平成26年5月16日知財高裁大合議事件判決・決定
(1)平成25年(ネ)第10043号事件判決
本件はFRAND宣言された特許権についての著名な事件です。紛争当事者がアップルとサムスン、対象製品も「iphone4」や「ipad2 Wi-Fi+3Gモデル」などであり注目を集めました。
上記各製品は、第3世代携帯電話システム(3G)の世界標準化等を目的とする民間団体である3GPPが策定した通信規格、UMTS規格に準拠した製品でした。
サムスンは、3GPPを結成した標準化団体の一つであるETSIの「Intellectual Property Rights Policy」に従って,2007年8月7日,特許第4642898号(本件特許)を含め,UMTS規格に関連して必須特許であるか,又はそうなる可能性が高い旨を知らせるとともに,「公正,合理的かつ非差別的な条件」(Fair, Reasonable and Non-Discriminatory terms and conditions)(FRAND条件)で,取消不能なライセンスを許諾する用意がある旨の宣言をしました。
本事案は、アップルが自らの販売等が本件特許の侵害には該当しないとして、サムスンがアップルに対する損害賠償請求権を有していないことの確認を求めた事案である。他にも争点がありましたが、特に注目されたのは以下の2点です。
① 特許権に基づく損害賠償請求権の行使が,FRAND条件でのライセンス料相当額を超える部分では権利の濫用に当たるが,その範囲内では権利の濫用に当たるものではない。
② FRAND条件での損害額の考え方を示し、以下の計算式によって計算しました。
損害額(ライセンス料相当額)
= ①対象製品の売上 × ②UMTS規格に準拠していることが売り上げに寄与したと認められる割合 × ③本件特許の貢献割合 × 累積ロイヤリティが過剰となることを抑制する観点からの上限(5%) × ④1 / UMTS規格の必須特許数(529件)
知財高裁は、以上の計算式により損害額を約995万円と認定しました。
なお、この訴訟では、平成26年1月23日、「FRAND宣言がされた特許による差止請求権及び損害賠償請求権の行使に何らかの制限があるか」について、一般からの意見募集が行われたことでも特徴があります(アミカス・キュリエ制度参照)。

(2)平成25年(ラ)第10007号、同第10008号事件決定
他にもサムスンが提起したアップル製品の販売等の差止め仮処分申立抗告事件の決定が言い渡されています。知財高裁は、東京地裁によるサムスンの本件特許に基づく販売差し止め請求権の行使は権利の濫用に当たるとの判断を維持し、サムスンの抗告を棄却しました。

2 平成30年6月5日、特許庁より「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」が公表されました(https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/seps-tebiki.html)。
FRAND宣言のなされた特許についてライセンス交渉の進め方とロイヤルティ算定方法の基本的な考え方が提案されており参考になります。