2018年6月株主総会の留意事項

 池田 佳史

2018年04月01日

<ポイント>
◆2018年総会に大きな影響を与える法改正等はない
◆株主質問に対してFDルールを念頭においた回答とディスクロージャーポリシーに関する質問に対する回答の準備を

上場会社の多数派である3月決算の会社はもうすぐ本会計年度が終了し、6月には定時株主総会を開くことになります。今年も3月決算の会社が株主総会の準備に入り始める時期となりました。
昨年までに改正会社法等やコーポレートガバナンス・コードの適用に対する対応は一段落し、今年6月の株主総会に直接に影響のある新たな法改正等はありません。
ただ、昨年6月の株主総会以降に導入された相談役・顧問制度をもつ会社の開示やフェア・ディスクロージャー・ルールに関しては株主からの質問等に対して準備をしておく必要はあります。
相談役・顧問制度をもつ会社の開示に関しては別稿ですでに説明している(拙稿「「相談役」「顧問」の開示制度の創設について」ご参照)ので、本稿ではフェア・ディスクロージャー・ルールについて説明をします。

フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルールといいます)とは、おおまかには、上場会社等が公表前の内部情報を第三者に提供する場合、当該情報が他の投資家にも等しく提供されることを確保するルールをいいます。アメリカでは2000年8月にレギュレーションFDとして同様のルールが導入されています。
平成29年5月17日に金融商品取引法が改正され(27条の36の新設)、FDルールが導入されることになりました。この改正金融商品取引法は本年4月1日に施行されることになっています。
FDルールでは、典型的には企業が未公表の決算情報などの重要な情報を証券アナリストなどに提供した場合、速やかに他の投資家にも公平に情報提供することとされています。
このルールが導入された理由としては、近年、上場企業が証券会社のアナリストに未公表の業績に関する情報を提供し、その証券会社が営業員を介するなどして顧客に当該情報を提供して株式の勧誘を行っていた事例が複数発覚したことです。
また、上記のとおりアメリカやヨーロッパの主要市場では導入済みであり、FDルールの導入により日本の市場の信頼性を確保する必要もあります。
FDルールの概要についてですが、従来からある適時開示と対比するとわかりやすいと思います。
まず対象となる情報は「当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすもの」です(これを「重要情報」といいます)。
一方、適時開示の対象は列挙された「決定事実」、「発生事実」、「決算情報」に加えて「上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」(いわゆるバスケット条項)があります。
適時開示対象の「決定事実」、「発生事実」、「決算情報」が重要情報と重なるのは当然として、「重要情報」と「バスケット条項」はともに包括的な規定ながら若干表現が異なっており、たとえば軽微基準に該当する情報でも株価に影響を及ぼすものがあり、それはFDルールにいう「重要情報」に該当しうるとされています(そのような情報は適時開示においては原則として該当しないとされています)。
また、FDルールによる開示は、意図的な証券会社等への情報伝達の場合には伝達と同時に、意図的でない情報伝達の場合には認識後速やかに当該情報を、ホームページ等で公表することになっています。
これに対して適示開示は「重要事実」の発生と同時にTDnetに開示することが原則的なものであり、ホームページでの開示は適時開示としては認められていません。
さらに、FDルールでは守秘義務及び投資判断に利用しない義務を負う者への情報伝達は対象外ですが、適時開示ではそのような例外はありません。
今年の株主総会では、株主からの質問に対する回答等の際にはFDルールを念頭に置く必要があります。金融庁もパブリックコメントに対する回答で株主総会での情報提供がFDルールの対象となると答えています。
また、ディスクロージャーポリシーに関する質問もあるかもしれません。ディスクロージャーポリシーの策定をしていない会社は策定について事前に検討しておいた方がいいと思われますし、策定している会社もFDルールに対応するよう修正を検討したほうがいいでしょう。