2015年労働者派遣法改正について

 池野 由香里

2015年10月15日

<ポイント>
◆期間制限のルール変更に注意
◆違法派遣を受け入れた場合労働契約申込みとみなされる場合も
◆キャリアアップ支援、待遇均衡の推進にも留意を

2015年(平成27年)9月30日(一部については10月1日)から労働者派遣法改正法が施行されました。
今回の改正は、派遣労働という働き方やその利用は、臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、派遣社員を常に正社員の代わりに利用することを防止するとともに、派遣労働者のよりいっそうの雇用の安定やキャリアアップを図るため、であるといわれています。
ただ、期間制限のルールの変更についても過半数組合等の同意があれば、3年を超えて受け入れることが可能であるなど、それほど改正の趣旨が徹底されている内容とはいえないように思います。
企業としては改正法への対応は抜かりなく行う必要がありますので、改正法の内容を理解しておくことが必要です。

(1) 期間制限のルールの変更
今回の改正でもっとも実務での影響が大きいと思われるのが、期間制限のルールの変更です。なお、経過措置として、施行時点ですでに締結されている労働者派遣契約については、その労働者派遣契約が終了するまで、改正前の法律の期間制限が適用されます。
① 派遣先事業所単位の期間制限
これまでは、一定の専門的な業務については、期間制限がなかったのですが、今回の改正により、同一の派遣先の事業所において、労働者派遣の受け入れを行うことができる期間は、原則3年が限度となります。
ただし、派遣先が3年を超えて受け入れようとする場合は、過半数労働組合等(過半数労働組合が存在しない場合、事業所の労働者の過半数を代表する者)からの意見を聞いて受け入れることが可能になります。
この意見聴取は、期間制限の上限に達する1か月前までに行うことが必要であり、労働組合等から異議が示されたときは、対応方針等を説明する義務があります。
なお、一度の意見聴取で延期できる期間は3年までです。
② 派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(「課」などを想定しています。)において、受け入れることができる期間は原則3年が限度となります。
つまり、同じ人について3年を超えて同じ課で受け入れることを禁止しており、逆に言えば、別の人を同じ課で受け入れることや、同じ人を別の課で受け入れることは問題ありません。
なお、派遣元で無期雇用されている派遣労働者や60歳以上の派遣労働者は、例外として期間制限の対象外となりますので、これらの条件を満たす場合には、同一の派遣労働者を同一の組織単位で受け入れることは制限されていません。

(2)派遣労働者と派遣先社員の均衡待遇の推進
派遣先は、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、以下の点で配慮義務(目的の実現に向けて具体的に取り組むことが求められるもので、努力義務よりも重い責務)が課され、具体的な行動をとる必要があります。
① 派遣元事業主に対し、派遣先の労働者に関する賃金水準の情報提供等を行うこと。
② 派遣先の労働者に業務に密接に関連した教育訓練を実施する場合に、派遣労働者にも実施すること。
③ 派遣労働者に対し、派遣先の労働者が利用する一定の福利厚生施設の利用の機会を与えること。

(3)派遣労働者のキャリアアップ支援
① キャリアアップ支援に必要な情報の提供
派遣先は、派遣元から求めがあったときは、派遣元によるキャリアアップ支援に資するよう、派遣労働者の職務遂行状況や、職務遂行能力の向上度合いなどの情報を提供する努力義務があります。
② 雇入れ努力義務
派遣労働者を受け入れていた組織単位に、派遣終了後、同じ業務に従事させるため新たに労働者を雇い入れようとする際、一定の場合には、その派遣労働者を雇い入れるよう努めなければなりません。
③ 正社員の募集情報の提供義務
派遣先の事業所で正社員の募集を行う際、一定の場合には、受け入れている派遣労働者に対しても、その募集情報を知らせなければなりません。
④ 労働者の募集情報の提供義務
正社員に限らず、派遣先の事業所で労働者の募集を行う際、一定の場合には、受け入れている派遣労働者に対しても、その募集情報を周知しなければなりません。

(4)労働契約申込みみなし制度
派遣先が下記の違法派遣を受け入れた場合(派遣先が善意無過失である場合を除く)、その時点で派遣先が派遣労働者に対して、その派遣労働者の派遣元における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたものとみなされます。
この制度に該当した場合の法的影響は重大ですので、企業としてはこの点については特に慎重に対応する必要があります。
① 労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
② 無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
③ 派遣可能期間を超えて労働者派遣を受け入れた場合
④ いわゆる偽装請負の場合