預金は遺産分割の対象とした最高裁大法廷決定

 高橋 英伸

2017年01月01日

<ポイント>
◆預金は相続開始と同時に法定相続分に応じて分割されるとの判例が変更された
◆預金の分割には遺産分割合意や審判が必要
◆被相続人の生前の相続対策等に影響必至

2016年12月19日、最高裁は大法廷の決定で、預金は遺産分割の対象とならず相続開始と同時に法定相続割合に応じて当然に分割されるとの従前の判例を変更し、預金は遺産分割の対象となると判示しました。今後、預金は遺産分割協議や審判を経なければ払い戻しができないことになります。本決定は、実務等に極めて大きな影響を及ぼすことになりそうです。
 
2004年(平成16年)4月20日最高裁判決は、「相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つ
ものではない」とし、預金債権は法定相続分に応じて当然に分割されると判示しました。
この判決によって、各法定相続人は遺産分割協議や審判を待たずとも、預金については自己の法定相続分に応じて払い戻しを請求できることになりました(対応は金融機関ごとに異なり、相続人全員の同意書がなければ払い戻しには応じないとするところもあり、払い戻しに訴訟提起を要することもありました。)。
もっともこの判決は、例えば多額の生前贈与を受けた相続人は相続開始後さらに預金を分割して受け取ることができるのに、生前贈与を受けていない相続人は分割された預金しか受け取れないというような不公平を生むことになりました。

今回、最高裁は、判例を変更する理由として「遺産分割の仕組みは・・・共同相続人間の実質的公平を図ることを旨とするものであること」を挙げています。このほか、預金債権は個々の入金毎ではなく、常に合算して1個の債権と扱われること、相続によって契約が分割されればその後の入金の際などに契約当事者に極めて煩雑な計算を強いることになること、定期預金について分割を認めると事務の定型化、簡素化を図るという定期預金制度の趣旨に反することなどを挙げています。

今回の判例変更は、金融実務への影響はもちろん、相続対策を考える被相続人にも大きな影響を与えるものと考えられます。従前、被相続人は、自分が亡くなった場合、残った預金は法定相続分に従って家族に分割されるから、それぞれの生活は一応保障できるであろうと期待できたかもしれません。しかし今後は、預金についても生前に対応しておかなければならなくなると思われます。例えば、相続開始後、相続人間で分割をめぐる争いが起きれば、預金は漬物のように何年も金融機関に預けられたままになり、誰も引き出せないということがありうるからです。