離婚における子の問題

 片井 輝夫

2012年07月01日

<ポイント>
◆親権者は、母親重視・同居事実尊重から変化するのでは
◆日本人配偶者が外国人との間の子と日本へ帰国することは時には犯罪になることも

離婚に際して、両親は、未成年の子の親権者を定めなければなりません。
ときには、子を巡って激しい争いになることがあります。親が子の親権を獲得しようとする動機は、いろいろあります。
とにかく子がかわいい、無責任な相手に子の養育を任せられない、子と離れると孤独になるというのが大半です。
しかし、時には、夫から子を引き離すことで夫に報復する、夫に金銭要求をするといった不純な動機によるのではないかと疑われるケースもあります。女性が子を手放すことで、女性失格者と思われたくないという動機が働いているのではと思うこともあります。
逆に、夫が妻への報復目的で、子を取り合うというケースも少なからずあります。

親権者は、まずは夫婦の協議で決めますが、協議が整わないときは調停、調停でも解決できないときは裁判により決着をつけることになります。
裁判所は、どちらの親に任せるのがより子の利益・福祉にかなうかという観点から、親権者を決めますが、我が国では、どうしても母親に親権を与える傾向が強く、特に子が小学生以下の小児期にある場合は、ほとんどのケースで母親に親権を与えます。
たとえば、夫に定職があり収入が安定している、夫の両親(祖父母)も近くに居住していて日常の通学や監護もできる体制が整っている、教育環境も良好であるなど夫側に有利な事情があり、逆に、妻は精神的に不安定である、実の両親とも疎遠で育児の協力を得られないというような不利な事情があっても、なかなか夫側に親権が与えられることはありません。
我が国の裁判所には、女性の母性本能への信頼感、子は母に育てられることが幸せという、一種思いこみがあるのかもしれません。
最近、母親の育児放棄や虐待事例も増加しており母性本能というのもあまり頼りになりません。また、心から子を愛していて、真摯に子の将来を考えて親権を獲得したいと考える父親も増加しているような気がします。

もうひとつ、裁判所が親権者を決めるときの判断に影響を与えているのではと思える要素があります。それは、親権者を決定する時点での子との同居の有無です。
夫婦関係が破綻してくると、配偶者との同居に耐えられないということになりますから当然別居することになります。親が別居するわけですから、どちらか片方の親が子を連れて養育します。
弁護士の経験からいうと、ケースとしては母親が父親と生活していた住まいから子を連れて出る、父親が単身で住まいを出る、母親が単身で出る、父親が子を連れて出るという順で多いといえます。いずれにしても、別居開始時点で、母親が子との同居関係を継続し、離婚紛争で親権者を定めるときには、子の生活環境がすでに定まっていることが多いのです。
裁判所は、現実に子と同居している親(以下、同居親といいます)に親権を与える傾向が強いといえます。というのは、裁判所は、同居親と子の生活環境が一応定着しているのであれば、これを覆してまで非同居の親(以下、非同居親といいます)に親権を与えるのは、やはり躊躇するからです。一旦生活環境が固定してしまうと、子にとってそれが決して望ましいとはいえない環境であっても、子を同居親から引き離すことによって子が受ける精神的痛手を心配してしまうのです。
したがって、よほど非同居親に親権を与える理由が強度であるか、また同居親に子の養育を委ねることが子にとって危険性が高いというような場合以外は、そのまま同居親に親権が与えることが多いのです。
こういった現状から、どうしても女性が子供を連れて別居するということが多く、母が事実上子を自分の監護下に置くということが行われますし、一般社会も、夫婦別居に際して、母が子を連れて行くことをむしろ母の義務と受け取っています。

しかし、これからは、裁判所も少しずつ運用を変えていく必要があるかもしれません。
父親が子を引き取れる体制を懸命に作り出しているような場合は、裁判所は、事実状態に引きずられずに、長い目で見て子にとってより良い環境かどうかによって判断すべきで、少しずつそういう方向に向かって行くように思えます。また、当事者も裁判所の判断を尊重し、子への悪影響を可能な限り避けて、冷静に子の引き渡しを行うという対応が求められます。最悪なのは、裁判所の判断に従わない親がいることです。子を傷つけるだけに終わってしまいます。

日本は、批准していませんが、欧米では「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」を批准している国が多く、片方の親が別居に際して、子を本国に連れ帰るような行動を規制しています。
また、最近、アメリカ人と婚姻していた日本女性が、夫と別居して子を日本に連れ帰った事例で逮捕されてしまったことが報道されました。
幼い子とはいえ、親が子の同意の下に平穏に連れ出す行為を犯罪とすることは、日本の風土からすると行き過ぎのように思いますが、子を事実上取り込んだら勝ちということを許さず、公平に親権者を定めようという時流のひとつの現れと思われます。