遺言書作成の注意点

 木ノ島 雄介

2011年07月15日

<ポイント>
◆遺言書は何度でも書き直せる
◆相続人が自分より先に死亡した場合に備えた規定も書く

遺言書の書き方が雑誌で特集されることが最近多く見受けられます。遺言書を書く意義は、自らの財産の行方について意思を表明すること、自らの財産をめぐって親族どうしが争うことを避けること、相続手続を簡略化することです。
仲が良かった親族どうしが財産をめぐって仲違いすることは避けなければなりません。自分には財産が少ないから遺言書を書く必要はないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくても親族間で争いになることがありますので、やはり遺言書を書く意義は大きいといえます。
遺言書を書く意義や書き方については弊所のホームページが参考になるかと思います。
遺言の方法と留意点
http://www.eiko.gr.jp/photoessey/daikiessey075.html

ここでは、遺言書を書く際の注意点について補足してみたいと思います。
説明しやすくするために、配偶者と長男、次男の3人の家族に対して「配偶者に土地建物を相続させる。長男には預金を相続させる。次男には株式を相続させる。」との遺言書を書くという事例を設定します。

遺言書は何度でも書き直すことができます。上記の遺言書を書いた後に自分より先に配偶者や長男・次男が亡くなった場合には、遺言書をあらためて書き直すことができます。
もっとも、遺言書を書き直そうと思っていた矢先に遺言者自身が不慮の事故に遭い、結局書き直さずに死亡してしまうという可能性もゼロではありません。
例えば配偶者が遺言者より先に亡くなったのに遺言書を書き直さずにいたところ、交通事故に遭って遺言者自身も死亡した場合、長男・次男の間で、土地建物をどのように分けるかを話し合うことになりますが、その際争いになるかもしれません。これでは遺言書を書く意義が薄れてしまいます。
したがって、遺言書を書く時点で、相続人の一部が自分より先に亡くなったら財産をどうするのかまで決めている場合は、その旨の規定(補充規定)まで書いておいた方がよいです。例えば「遺言者よりも先に配偶者が死亡した場合は、土地建物は長男に相続させる。」と書くとよいです。

なお、二人の子(長男・長女)がいる者が「長男に全財産を相続させる。」との遺言書を書いた後、長男が遺言者より先に死亡したため、遺言者の死亡後に長男の子と長女とで遺言者の財産をめぐって争われた事件が実際にありました。
長男の子は、遺言によって全財産を相続できる立場を引き継いだと主張し、長女は、もはや遺言書は無効であると主張しました。遺言書が無効であるとすれば法定相続に従うことになります。
この事件に対しては最高裁判所が「遺言により財産を相続できることになっていた相続予定者が遺言者より先に、または遺言者と同時に亡くなった場合、遺言書作成当時の状況などから『遺言者は上記の場合、相続予定者の子などに財産を相続させるつもりだった』といえない限り、遺言書は無効である。したがって本件においても遺言書は無効であり、法定相続に従って長男の子と長女が相続する。」との判断を示しています。
しかし、この判断によっても、遺言により相続できることになっていた相続人が遺言者より先に死亡した場合の遺言者の財産の行方ははっきりしないので、やはり、補充規定を書いておくとよいと思います。