遺言執行者の選任

 木ノ島 雄介

2014年10月15日

<ポイント>
◆遺言執行者を定めるか否かの吟味も必要
◆不動産を遺贈する遺言には遺言執行者を定めた方がよい
◆預金を相続させる遺言には遺言執行者を定める利点がある

故人が作成した遺言書の内容を実現する方法について、遺族の方からご相談を受けることがあります。その故人が誰にいかなる財産を分けようとしたのか、遺言書で遺言執行者が選任されているか否かでその後の手続は変わってきます。
また、死後に備えて遺言書を作成してもらいたいとの依頼を受けると、弁護士としては、実現したい内容をその依頼者から聴き取り、遺言執行者を定めた方がよいかどうかも検討することになります。

死後認知や推定相続人の廃除が遺言書に盛り込まれているのなら、遺言執行者を定めておくべきです。遺言執行者しか執行できないからです。
また、遺言の内容が特定の不動産を相続人以外の者に遺贈するというものであれば、遺言執行者を定めた方がよいです。遺言執行者がいないと、受遺者が登記を備えるには受遺者と相続人全員が共同で登記の申請をしなければなりませんが、相続人の協力を得られるとは限らないからです。
遺言の内容が、特定の不動産を特定の相続人に相続させるというものであれば、遺言執行者を定める必要はありません。
なぜなら、特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」という遺言がなされると、相続人以外に遺贈する場合と異なり、その不動産は、遺言者の死亡と同時にその相続人が当然に取得し、自ら単独で遺言者の名義から自分の名義に変えることができ、その反面、遺言執行者が選任されていても遺言執行者は登記手続を行う権利も義務もないからです。

なお、遺言で特定の相続人に「相続させる」遺産が、不動産ではなく銀行預金である場合には、遺言執行者を定める利点があります。裁判所は、その相続人に預金を取得させるために、遺言執行者が銀行に払戻しを求めることができると判断しているからです。平成24年1月25日に東京地方裁判所で下された判決です。
理由として、預金を「相続させる」という遺言があったとしても、金融機関は、相続人全員の承諾を証明する書面や印鑑証明書の提出を求める取り扱いをしていることが多いため、遺言を円滑に実現するために遺言執行者が単独で払戻し請求できることを認めるべき実益があることが挙げられています。

次に、遺言執行者を定めることにしたとして、どのように定めるかですが、遺言者が遺言書の中で指定して定めることが多いです。遺言書の中で、遺言執行者の指定を第三者に委任することもできますが、これはそれほど多くありません。

ただ、遺言者が死亡する前に、遺言執行者に指定されていた者が死亡することがあります。あらかじめ遺言執行者を複数指定しておけばそのうちの1人が死亡しても残りの者が遺言執行を行うことができますが、1人しか指定していなくてその1人が死亡してしまえば、遺言執行者がいないことになります。そこで、遺言執行者の新たな選任に向けた対応が必要となります。
対応の仕方の1つは、遺言者が遺言執行者を再指定することです。遺言執行者の指定は遺言でしかできませんので、遺言の要式を守る必要があります。
対応の仕方のもう一つは、遺言者の死後に、相続人、 受遺者などの利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者選任の申立を行うことです。 この対応は、はじめから遺言執行者が指定されていなかったケースにも妥当します。家庭裁判所が必要と判断すれば、遺言執行者が選任されます。

遺言を作成するにあたり記載内容に迷われたら、弁護士に相談すればそれだけでも、どのように記載すればよいのか方向性が定まると思います。