試用期間中の解雇

 池野 由香里

2017年12月15日

<ポイント>
◆試用期間中は解約権留保付き労働契約が成立
◆試用期間中の解雇も自由にはできない点に注意
◆能力不足の有無は期待ではなく処遇に応じて判断される傾向

多くの企業が、採用した後の一定期間(通常3か月から半年)を試用期間としています。
今回は、この試用期間中の解雇について解説したいと思います。

試用期間とは、採用後に従業員としての適格性を観察・評価するために企業が設けた期間のことを言います。
試用期間中は企業側に解約権留保付き労働契約が成立していると解されています。

試用期間中の解雇については、最高裁判所の判例があります(最判昭和48年12月12日 三菱樹脂事件)。
この最高裁判例では、試用期間が適格性の判断のために設けられた期間であることに鑑み、試用期間中の解雇は通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、より広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきもの、としています。
一方で、企業の優越的地位や、労働者が他企業への就職の機会を放棄していることなどからして、試用期間中の解雇については、客観的合理性と社会的相当性がある場合にのみ許される、としています。
そして、客観的合理性と社会的相当性を具備していない解雇については、解雇権の濫用とされ、解雇が無効となります。

この点、試用期間中であれば、社風に合わないなどの漠然とした理由でも問題なく解雇できると考える方がおられますが、そうではないことに注意すべきです。

では、具体的にどのような場合に解雇が認められ、どのような場合に認められないのでしょうか。
一般には、社会人経験や特定の職種の経験があることを前提に、それに応じた給与や役職を与えている場合に、それに比べて能力不足が判明したときには、解雇が認められる傾向にあります。

その一例として、社会保険労務士としての資格を有し、経歴からも複数の企業で総務及び経理の業務をこなした経験を有することを考慮され、人事、財務、労務関係の秘密や機微に触れる情報についての管理や配慮ができる人材であることが前提として採用された総務担当者が、全社員が出席する会議において、突然、「決算書の経理処理が誤っている。」と発言したことをもって、解雇した事案についての裁判例(東京高裁平成28年8月3日)があります。
これについて、裁判所は、企業が総務担当者に対して期待していた労務管理や経理業務を含む総務関係の業務を行う従業員としての資質を欠くと判断されてもやむを得ないものであり、かつ、企業としては、(資質を欠くことが)総務担当者を採用するに当たり事前に承知することができない情報であり、仮に事前に承知していたら、採用することはない労働者の資質に関わる情報というべきである、として、解雇を有効としています。

この判例においては、企業がその総務担当者の言動に対し注意や指導等を行ったという事情を認定していないにもかかわらず解雇が認められている点に注目させられます。

その一方で、有資格者ではあるものの、実務経験がないことを前提に採用した場合において、手続き上のミスがあったことを理由に能力不足であるとした解雇は無効であると判断した判例(福岡地裁平成25年9月19日)があります。

つまり、企業が採用にあたって、その人材にどの程度期待していたかによって、解雇の許される範囲が異なってくるわけです。

ただし、それは単なる主観的な期待ではなく、給与等の客観的な処遇によって判断されるべきです。

この点に関する判例として、土木構造物の設計について専門的能力を有する技術者として採用された技術者について、基本的な設計図面の作製能力を欠いており、設計業務に従事する適性を著しく欠いているとして、試用期間中に解雇をした事案において、給与等の契約内容はそうした経験を持たない他の従業員と差がなく、その処遇がその経験に即して定められていたわけではない、などを理由に解約権を行使する客観的に合理的な理由が存在するとは認められない、として解雇を無効としたもの(東京地裁平成27年1月28日)があります。