覚せい剤事件における「捜査の端緒」

 木ノ島 雄介

2016年06月15日

<ポイント>
◆職務質問・所持品検査・自動車検問などが多い
◆所持品検査の現場で覚せい剤と判定できるよう試薬が開発されている
◆親が子の覚せい剤所持等を連絡することもある

覚せい剤を買ったこと、気化させて吸引したこと、所持していたことを理由に、清原和博元プロ野球選手に対して懲役2年6か月、執行猶予4年、覚せい剤没収の有罪判決が下された、との報道が5月末になされました。
また、6月に入ると、沖縄県の那覇港に停泊中のヨットから覚せい剤約600キログラムが押収された、外国人が営利目的で輸入しようとして逮捕された、との報道もなされました。
たまに国選弁護事件を引き受けると覚せい剤事件が多く、それだけ覚せい剤が国内に広まってしまっていると感じていただけに、関心をもってこれらの報道に接しました。

弁護士が覚せい剤事件の弁護を受任した場合、犯罪の嫌疑をかけられているから話を聞き、様々な点を確認するのですが、その中の一つが、「捜査の端緒」から被疑者が逮捕されるまでの一連の手続が適法であったかどうかです。「捜査の端緒」とは、「捜査機関が犯罪ありと思料するに至った理由」のことです。覚せい剤事件では、職務質問、所持品検査、自動車検問などが多いです。
職務質問については、警察官職務執行法という法律で「異常な挙動・・から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者・・を停止させて質問することができる」と定められています。
さらには、その場で質問をすることが本人に対して不利であったり、交通の妨げになったりするような場合には、職務質問をするために付近の警察署などに同行を求めることができると定められています(任意同行)。
路上、または駐停車中の自動車内などにいる(警察官からみて)不審にみえる者に対して職務質問をしたり、自動車検問の際に不審な行動をとる者に職務質問をしたりした結果、たとえば落ち着きのない言動が認められると、付近の警察署等までの任意同行や、尿検査のための尿の任意提出を求められることがあります。
また、所持品検査により、覚せい剤と思われる粉末・結晶の入ったパッケージがみつかると、Xチェッカーという覚せい剤予試験試薬による簡易試験(予試験)が説明のうえ行われ、覚せい剤反応が出れば、覚せい剤所持を理由とした現行犯逮捕につながります。

もっとも、清原元プロ野球選手についていえば、警察官が捜索差押許可状を執行するために自宅に赴いて捜索したところ、覚せい剤らしきものの入ったポリ袋などがみつかり、予試験を実施した結果、覚せい剤反応が出たため、現行犯逮捕されたとの報道がなされています。
これを前提にすると、先に述べた職務質問・所持品検査・自動車検問以外の警察活動を「捜査の端緒」として、捜査機関は清原元プロ野球選手の覚せい剤所持などを疑い、裁判官から捜索差押許可状の発布を受け、現行犯逮捕に結びつけたと考えられます。
また、上述した覚せい剤の営利目的輸入未遂の疑いで逮捕した事件については、もともとは税関検査の際、麻薬(覚せい剤とは別の違法薬物)を隠し持っていたとして、麻薬取締法違反という別事件で逮捕したことが「捜査の端緒」のようです。

弁護人としての経験上、「捜査の端緒」としてはほかにも、親が子の覚せい剤所持などを捜査機関に連絡する、といったこともあります。子が覚せい剤欲しさに購入資金を求めて親に暴力を振るうため、親がたまりかね、またはわが子に更生してもらいたいと思って、捜査機関に連絡するということです。親の心情はいかばかりかと思います。