行政庁に対する義務付け訴訟

 高橋 英伸

2019年11月15日

<ポイント>
◆行政庁に対して許可等の義務付けを求める訴訟が可能
◆許可等の申請に不備がないことが前提

行政庁に対して一定の処分等を求める旨の法令に基づく申請がされた場合に、当該行政庁がその処分等をすべきであるにも関わらずこれをしないときに、処分等をすべき旨を行政庁に命じることを求める訴訟があります。
これを一般に義務付けの訴えといいます。

例えば、開発行為を行いたいのに行政庁の許可等がいつまで経っても降りない場合、事業者にとっては、準備のための費用と時間を垂れ流しながら、得べかりし利益を得られない状態が続くことになります。
このような場合に上記の訴えを起こすことで強制的に行政を動かすことができます。

過去にこれが認められた例としては、国定公園の特別地域内における太陽光発電設備の新築許可の義務付け、保安林の指定解除の義務付け、老人デイサービスセンターを設置するための開発許可申請に当たっての都市計画法上の同意の義務付け等があります。

この訴えが裁判所に認容されるためには、当然のことですが、法令に基づく申請自体に不備が無いことが要件となります。
許可基準を満たしていない場合などには訴えが棄却されます。
また、審理中に行政庁が許可等の然るべく処分をした場合には訴訟を継続する利益がなくなるので訴訟は却下により終了します(この場合は、目的を達したことになります。)。

義務付けの訴えは、環境被害を受けた地域住民などが行政に違法建築物の除去等をするよう求める場合に活用されています。このような非申請型の場合には、「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り」という厳しい要件が課されるため、訴えの認容判決が出ることはなかなかありません。
事業者による許可申請等が問題となる申請型の場合には、この要件がないため若干ハードルが下がります。しかし、行政庁に対する訴訟の勝訴率は一般には高くないことに留意する必要があります。
それでも、事業者にとっては、行政庁が言を左右にして、不当にもいつまでたっても処分等をしないときや誤った処分をしたときには、政庁を強制的に動かすために義務付け訴訟を活用して支障を排除すべき場合があるのではないでしょうか。