著作権等の保護について

 井上 彰

2017年11月15日

<ポイント>
◆商標権や著作権は相続人がいない場合には消滅する可能性がある
◆特に著作権については、消滅を回避するための手立てを講じる必要がある

権利者が亡くなられた場合に商標権や著作権はどのようになるのでしょうか。
アンパンマンの生みの親は言わずと知れた「やなせたかし先生」(以下「やなせ先生」)ですが、やなせ先生は2013年(平成25年)10月13日に亡くなられたと報道されています。その後のアンパンマンの商標権や著作権はどうなっているのでしょうか。

1 商標権について
商標権の登録情報については独立行政法人工業所有権情報・研修館のサイト「特許情報プラットフォーム」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)で確認できます。このサイトで「商標」の「呼称検索」にて「アンパンマン」を検索するとアンパンマンに関わる商標権が合計33件あることが分かります。
これら商標の権利者欄には「柳瀬嵩(やなせ先生の本名)」と「株式会社フレーベル館」が記載されているもの、または株式会社フレーベル館が単独の商標権者として記載されているものがあります。商標権も財産権ですので、商標権者が死亡した場合には法定相続人に相続されることになります。
しかし、報道によるとやなせ先生には法定相続人がいらっしゃらないようです。
やなせ先生が単独の権利者である商標権があったのかはわかりませんが、商標権について相続人がいない場合には、その権利は消滅することとなります(商標法35条、特許法76条)。また、共有にかかる商標権について共有者の一人が相続人もおらず死亡した場合にはその持ち分は他の共有者に帰属することとなります(民法255条。やなせ先生のお名前が登録上残っていますが、これはフレーベル館にて敢えて手続をとっていないものと思われます)。
商標権については、出版社が単独で、あるいは著作権者と共同で作品タイトル等の出願・登録をしていることが多く、権利者の死亡による商標権の消滅を危惧する必要性は事実上少ないと言えます。

2 著作権について
(1)著作権は著作物を創作した時点で発生するもので、商標権のように登録によって権利が発生する権利ではないため、著作権者が誰かを特定するのは難しい点もあります。そこで、作者であるやなせ先生が単独で著作権を有している場合を考えてみます。
著作権も相続の対象になりますので、法定相続人がいれば著作権を相続します。このとき、基本的には著作権は著作者の死後50年を経過するまでの間、存続することになります(著作権法51条2項)。
これに対して法定相続人がいない場合には、やはり著作権が消滅してしまう可能性があります(著作権法62条、民法959条)。
商標権と異なり著作権の場合には、出版社が特段の方策を講じていないことも多いのではないでしょうか。このような場合には、相続人のいない作家さんの著作権は、没後に消滅するリスクに晒されることになります。

(2)譲渡による消滅リスクの回避
こうしたリスクを回避するもっとも単純な方法は、著作権(著作者人格権を除く)を譲渡することです。第三者、例えば自身が設立した会社に譲渡することが考えられます。また、遺言により遺贈することもできます。こうした譲渡手続をとることにより相続人不在による著作権消滅のリスクを回避することができます。ただし、翻訳権、翻案権等(著作権法第27条)、及び二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(著作権法第28条)については譲渡契約書で譲渡を特記しなければならず、注意が必要です(著作権法61条2項)。
法定相続人がいる事例ではありますが、例えば「ターザン」については作家が設立した会社に著作権を譲渡しており、作家の死後も当該会社によって著作権・商標権等の権利保護活動が長期にわたってなされているケースもあります(知財高裁平成24年6月27日判決より)。

(3)二次的著作物の著作権
以上は、原著作物の著作権についての話です。ところで「それいけ!アンパンマン」のサイト(http://www.anpanman.jp/)の記載を参考にしますと、やなせ先生とフレーベル館のほかの権利者として日本テレビ放送網株式会社(NTV)他3社が記載されています。アンパンマンについては、絵本を原作として二次的著作物であるアニメ等のテレビ番組・映画、デジタルコンテンツ等についても著作権が成立しています。
もしアンパンマンの著作権がやなせ先生に単独で帰属していたとすると原著作物の著作権は消滅している可能性もありますが、二次的著作物の著作権は各法人(ないし製作委員会)に帰属し、あるいは各法人が著作権を共有している等しているものと思われます。そのため、アンパンマンの使用については二次的著作物の著作権が存続しており、二次的著作物の利用についてはいずれにせよ権利者の許諾を得なければならないものと考えます。

アンパンマンをはじめとする素晴らしいキャラクターが多くの子供たちに愛され続けるように、一ファンとしては今後も著作権による適切な維持・発展がなされるよう願っています。