続-嘘との戦い

 高橋 英伸

2018年02月01日

<ポイント>
◆自動運転で保険金詐欺は減る?
◆車を外部から操る詐欺手法は阻止してほしい

 先日、保険金詐欺について取材を受けました。昔からある保険金詐欺が一向に減らないのはなぜかという疑問を持たれた記者から質問攻めにあいました。保険金詐欺事案と対峙する身としては、目の前の事案の処理に追われていて、記者のような大きな視点で考えたことはあまりなかったので考えさせられました。

 考えた末にどのような回答をしたか、詳しいことについては報道(日時等未定)に委ね、あるいはボツになった時点で密かに打ち明けることにして、今回は一点だけ触れてみたいと思います。

 よくある事故偽装事案は追突事故です。昔からありますが、前後の車の乗員が共謀の上、わざと後ろの車を前の車にぶつけて車の損傷やケガについて保険金を騙し取ろうとします。
 さてこのような古典的な事案、今後も起き続けるのでしょうか。答えは否ではないでしょうか。なぜなら自動運転技術によって阻止されるからです。
 
 すでに広く普及を見せている衝突被害軽減ブレーキは、衝突速度を抑えるのみならず、事故発生寸前に自動で停止する機能に発展しています。いずれ、「ぼーっとしていた」、「携帯をいじっていた」という理由の追突事故は起きなくなってしまうでしょう。車に逆らってわざとアクセルを踏めば追突事故を起こせるかもしれませんが、運行状況を車が記録しているのでわざと踏んだことは簡単に露見してしまいます。
自動運転技術は、自動車の安全性向上や自動車産業の発展を主たる目的として年々発達してきていますが、副次的な効果として、保険金詐取を阻止できるのではないかと考えます。

あいおいニッセイ同和損保は2018年1月から日本初のテレマティクス自動車保険のサービスを開始しています(テレマティクスとは「テレコミュニケーション(通信)」と「インフォマティクス(情報工学)」を組み合わせた造語ということです。)。テレマティクス技術で契約車両から取得した走行データに基づき安全性を評価して保険料に反映する商品です。このような技術・商品が普及すれば、車は外部からも走行状況を把握されることになります。

車内と車外のいずれからも事故が起きないようにコントロール・監視されるようになるなら、自動運転技術等が搭載されていない「クラシックカー」でしか事故を偽装できなくなってしまうのではないでしょうか。

 他方で懸念されているのが車外から車が操られることです。これまでは車内で人が運転している限り、それを車外から操作することはできませんでしたが、今後、パソコンがハッキングされるように、自動運転中の車が何者かによって外部から操られることが懸念されています。外部から操られた場合は運転者に責任(故意・過失)がないから、被害者の救済はひき逃げ事案など加害者が不明の場合に利用できる政府保障事業によるべきではないかといった議論がされています。
 
 ここで私が気になるのは遠隔操作による事故の偽装です。それができるなら、乗っている者と車外から操る者が共謀して事故を起こすこともありえます。そうなってしまっては今までと同じで詐欺師と保険者のいたちごっこになってしまいますので、新たな詐欺手法が生まれないような技術の発展を祈りたいと思います。