破産管財人の役割と関わり方

 高橋 英伸

2012年04月15日

<ポイント>
◆管財人は破産財団の管理処分権者
◆利害関係人は、破産手続開始前は破産者と、開始後は管財人と協議
◆事業者破産は事業の解体、破産者の有していた事業用資産の活用を

企業が破産した場合、新聞に「○○社は○○地方裁判所に破産を申し立て・・・破産手続の開始決定を受けた。破産管財人は○○弁護士・・・」というような記事が載ることがあります。そこで本稿では破産管財人の役割と、破産企業の取引先から見た破産管財人との関わり方ついて解説します。

破産手続は、破産者(厳密には破産前なので「債務者」ですが、ここでは特に断らない限り、手続開始前と後を問わず破産者とします。)などが裁判所に破産手続の開始を申し立て、裁判所が手続開始の決定をするところから始まります。この手続が始まると、破産者に属する一切の財産は「破産財団」となります。ただし、個人の破産者については、生活するために最低限必要な財産(一定の現預金、家具など)は破産財団には含まれません。

手続開始と同時に裁判所は破産管財人を選任し、破産管財人だけが破産財団を管理処分する権限を持つことになります。なお、破産財団がほとんどなく債権者への配当が困難なことが明らかな事案では、裁判所が破産手続開始と同時に手続を終結させ(「同時廃止」といいます。)、管財人が選任されないこともあります。

破産管財人の主な役割は、破産財団を最大限確保し、もし債権者への配当が可能ならばこれを実施する、個人の破産者についてはその責任を免れさせるか否かにつき裁判所に意見を述べるという職務になります。
破産管財人には通常、弁護士が選任されます。
破産管財人の弁護士と破産申立代理人弁護士とは違います。破産申立代理人弁護士は、「債務者」から依頼を受け、破産申立手続を代理します。破産手続の準備段階として破産者の財産管理をする役割も求められます(後述します)。のみならず手続開始後も手続が終了するまで破産者をサポートします。
両者は破産手続が円滑かつ公正に進むよう協力しあいますが、破産申立代理人弁護士は破産者の立場、破産管財人の弁護士は中立たるべき破産財団の管理者の立場にあり、置かれた立場は異なります。

破産手続上の一つのポイントは、破産手続開始の前後で破産財団の管理処分権を持つものが変わるということです。手続開始前は破産者、開始後は破産管財人です。
そこで、破産者の取引先や債権者などの利害関係人は、破産手続開始前は破産者(あるいはその代理人)と、手続開始後は破産管財人と交渉して、それらの処理について協議をすることになります。

大阪地方裁判所の場合、破産手続開始の申し立て前に、破産者の代理人において、可能な限り財産の処分(債権の回収、営業所の明け渡しや担保物件の処分、引渡し等)をしておくことを推奨しています。
そこで、破産者の債権者は、破産の情報を得たら早期に破産者の代理人に連絡をとって債権保全のためにできることを探り、優先権があればそれを主張し、引渡しなどを求めた方がいいでしょう。破産予定となった以上、全ての債権者に満足のいく解決はまずありえないので、公平な処理を実現すべく、破産法上、抜け駆け的な債権回収は許されません(そのような回収をした場合、破産管財人によって返還を求められることになります)。しかし、破産法上、担保権などの優先権は保護されるので、破産手続前に担保物件の引渡し等を求めることはできます。
破産手続開始の申し立てから開始決定まではタイムラグがある上、破産管財人が財産全体を把握して処分方針を立てるためにもある程度時間を要するので、債権者は手続開始の申し立て前に行動を起こす方が良いケースも多々あります。
ただし、破産者の財産が膨大であったり取引先が多数であったりして、破産申し立て前の財産の処分が困難であったり、その処分による混乱が懸念される場合は、破産者が破産手続開始までに全財産を保全して、全ての財産を破産管財人による処分に委ねる場合もあります。この場合は、優先権についてもその処理にはどうしてもある程度の時間を要してしまいます。もっとも、手続開始後にできるだけ早い解決を望むのであれば、やはり早期に破産管財人に連絡をとって交渉を始めるべきということにはなります。

破産手続は、破産者の事業については、その再生を目的とする手続ではなく、清算を目的とする手続です。そこで破産管財人は手続が始まると什器備品、機器類、不動産、債権などからなる財団の換価作業を急ぎます。財団を構成する個々の資産については極力時価ないし市場価格で処分することが望まれますが、すべての資産が時価で売れるまで永久に破産手続を終えないわけにもいかないので、売価が安くとも処理が優先されることが少なくありません。
また、そのような事情もあり、一つの事業のために組み合わされて価値を有していた資産も、バラバラに処分すればするほど安価に処分せざるをえない場合が多くなります。
もし、一つの事業のためのまとまった資産として買い取ってくれる事業者(スポンサー)がいれば、その方がバラバラに処分するより財団を増やすことができ管財人にとってはありがたいし、社会的にも有意義です。買主としても安価な投資で事業を拡大できる可能性があります。破産者の取引先としては、場合によっては、取引先等の破産手続を自社の事業拡大等に利用できることがあるかもしれません。