知財訴訟費用保険

 高橋 英伸

2016年08月01日

<ポイント>
◆知財訴訟被告事件の訴訟費用に備える保険
◆登録できない権利の案件(不正競争防止法の形態模倣等)は対象外

損害保険ジャパン日本興亜株式会社が国内で知的財産権の係争に巻き込まれた場合にその費用を補償する「国内知財訴訟費用保険」を2016年7月から販売するとのことです。TPP協定において侵害行為が立証できれば最低限の賠償金を受け取ることが可能となるルールが定められていることなどから知財訴訟が増えると見込まれること、中小企業において知財紛争に対応する費用が多大な負担となることが開発の動機とのこと。

対象となる知的財産権は特許権、意匠権、実用新案権、商標権です。要するに登録可能な権利ということになります。
また、補償内容は、業務遂行上、第三者のそれらの権利を侵害したこと、侵害するおそれがあることを理由に訴訟提起を受けたことで必要となる費用(弁護士、鑑定費用等)の補償です。あくまでも訴えられた場合の費用で、訴える場合の費用ではありません。

知財訴訟の弁護士費用は安くありません。知財訴訟の被告として敗訴すると訴訟費用を負担するのみならず、多大な損失を被ります(例えば、賠償金を支払わされる上、売っていた商品を売れなくなる、信用が失墜する。)。そこで、訴えられた場合、負けてもいいということにはならず、費用を惜しまず勝ちに行かなければなりません。このようなリスクに備える保険はそれなりの潜在的需要がありそうです。

裁判所の統計によると、知財訴訟の新受件数は年間約550件ほどです。内訳は特許権、意匠権、実用新案権および商標権の案件がほぼ50%、残りの50%は不正競争防止法、著作権などの登録のされない権利の案件が主のようです。そうすると、上記保険は、知財訴訟の内、半分の訴訟に備える保険ともいえます。自社の業務が特許権等の登録される知的財産にどれほど関わるのかによってこの保険の価値は大きく変わってくることになります。