知財紛争における具体的態様の明示という問題

 森田 豪

2018年03月01日

<ポイント>
◆知財紛争では情報開示をめぐる攻防に対処しなければならない
◆原告の主張が抽象的であれば、被告側に具体的態様の明示義務は生じない

被告側代理人として営業秘密に関する裁判を担当していたときのことです。相手方弁護士(原告側)が、当方の製品に関する設計情報や製造方法を開示せよと要求してきました。
当方は相手方の営業秘密を不正に取得しておらず、これを使用したこともないとして相手方からの差止請求、賠償請求を争っていました。
相手方の開示要求は、訴状の内容をなぜ争うのか、両社の製品がどのように異なるのかを明確にするために当方から情報開示せよというものです。

確かに不正競争防止法6条は、侵害行為を組成したものとして原告が主張する物や方法の具体的態様を被告が争うときには、被告は自社の具体的な行為態様を開示しなければならない、と定めています。もともとは特許法に同趣旨の条文があり、その後に不正競争防止法にも導入されたルールです。
これによると当方から情報開示する必要があるようにもみえてしまいますが、このルールは原告が具体的な主張をしている場合を前提としています。原告の主張が抽象的な内容にとどまる場合には被告側に開示義務は生じないとされます。
あてずっぽうで訴訟提起して、裁判手続きを利用してライバル企業からノウハウを開示させるようなことは認められないのです。
冒頭の事件では相手方の訴状が曖昧、抽象的な内容にとどまることを指摘して、当方からノウハウを開示するようなことはせずに対処していきました。
知財紛争ではこうした情報開示をめぐる攻防はよくあります。全て開示すれば白黒はっきりするようなケースであっても、「裁判で勝ったけど商売で負けた」では本末転倒です。

なお、冒頭の事件では、相手方が主張する情報がそもそも「営業秘密」にあたるのかという論点もありました。
また、平成27年不正競争防止法改正により、生産方法に関する技術上の秘密をめぐる事案では、一定の場合に営業秘密の使用行為があるものと推定する規定が設けられています。