相続開始後の賃料の帰属

 木ノ島 雄介

2014年07月01日

<ポイント>
◆遺言書の内容を確認する
◆相続開始時直ちに不動産を取得する者が賃料も取得する
◆遺産分割前の賃料の帰属は遺産分割の影響を受けない

相続財産の中に賃貸不動産がありますと、遺産分割をするまでの間に発生する賃料をどのように分ければよいのかについてご相談を受けることがあります。特に、遺産分割をするまでに時間がかかりますと、発生する賃料の額も大きなものとなります。今回は、被相続人の死亡以降に発生する賃料をどのように分けるべきかについて述べたいと思います。

出発点としては遺言があるかどうかです。
相続人の一人に賃貸不動産を相続させる遺言があるときは(以下「相続させる遺言」といいます)、被相続人の死亡時に直ちにその相続人が不動産を取得することになります。そうしますと、被相続人の死亡時からその相続人が賃貸人になり、被相続人の死亡以降に発生する賃料はその相続人のものとなると考えられます。

相続人以外の者に賃貸不動産を遺贈する遺言があるときも(以下「遺贈する遺言」といいます)、相続させる遺言と同じく、被相続人の死亡以降に発生する賃料は受遺者(遺贈を受ける者)のものとなると考えられます。遺贈する遺言のときも、被相続人の死亡時に直ちに受遺者が取得することになるからです。
なお、相続させる遺言と遺贈する遺言とでは、登記に関して以下の違いがあります。相続させる遺言では、賃貸不動産を取得したことを当然に第三者に主張できますが、遺贈する遺言では所有権移転登記が必要です(ただし、相続人は被相続人の地位を承継する者ですので第三者にはあたらず、受遺者は賃貸不動産を取得したことを登記なくして相続人に主張できます。)。
また、相続させる遺言では、賃貸不動産を取得した相続人が登記を備えるには、単独で申請できます。しかし、遺贈する遺言では、受遺者が登記を備えるには、受遺者と相続人全員(または遺言執行者)が共同で登記の申請をしなければなりません。

法定相続分の割合と異なる割合の相続分を指定する遺言があるとき、または遺言がないときの賃料については、最高裁判所で平成17年9月8日に下された判決が参考になります。
その内容は、被相続人が亡くなってから遺産分割をするまでの間に発生した賃料は、各共同相続人がその相続分に応じて当然に分割して取得するというものです。
たとえば、男性が妻と子3人を残して死亡したというケースにおいて、妻の相続分を3分の2、子らの相続分をそれぞれ9分の1と指定する遺言があれば、月額9万円の賃料について、妻は毎月6万円を、子らはそれぞれ毎月1万円を取得することになります。

遺言がないときは、法定相続分に応じて取得することになりますので(妻は2分の1、子らはそれぞれ6分の1)、妻は毎月4万5000円を、子らはそれぞれ毎月1万5000円を取得することになります。
そして、遺言のないまま男性が亡くなってから6か月後に遺産分割をした結果、賃貸不動産が母のものとなっても、この間に発生した賃料54万円は、遡って母のものになるわけではなく、母がそのうちの27万円を取得し、子らがそれぞれ9万円ずつ取得することになります(遺産分割以降に発生する賃料は毎月9万円全額が母のものとなります。)。

実際には、被相続人の死亡以降に発生する賃料を管理するために銀行口座を開設し、遺産分割をするまでの間、入居者にその口座に賃料を振り込んでもらい、遺産分割をする時に、上述した方法に従ってその時点の口座残高を分けることになると思われます。