相続法大改正

 高橋 英伸

2019年07月01日

<ポイント>
◆約40年ぶりの大改正・多くは2019年7月1日から施行
◆配偶者の居住権を手厚く保護する
◆自筆証書遺言が利用し易くなる
◆相続人以外の親族の貢献者が遺産から特別寄与料をもらえる

相続法(民法)が1980年(昭和55年)以来、約40年ぶりに大改正され、その多くは2019年7月1日から施行されます。この間、社会の高齢化が進展し、相続開始時の配偶者の高齢化も進んだため、改正法では配偶者保護が重視されています。また、遺言の利用を促進する制度など相続を活性化させるための方策が盛り込まれています。

1 配偶者の居住権保護
配偶者が相続開始時に遺産となる住居に住んでいた場合、遺産分割が済むまで無償の居住権を得られることになりました。たとえ建物が配偶者以外の者に遺贈されていても遺産分割が済むまでは居住できることになります。
また、遺言や遺産分割時の選択により、終身の居住権を得られる場合があることが明文化されました。以上の施行は2020年4月1日からです。
さらに、居住用不動産が配偶者に贈与又は遺贈されたときには、遺産分割の際に持ち戻しが免除されたものと推定されることになりました。要するに、他の相続人と遺産を分割する際、当該不動産を分割の対象にせずそのまま受け取った上で、さらにそれ以外の遺産を平等に分けてもらえると推定されることになりました。
なお、配偶者保護といっても事実婚の配偶者は対象になりません。これは、今回の改正があくまでも法律婚にのみ生じる相続に関する改正だからです。事実婚の夫婦は相続法改正とは別に、遺言等により自衛手段を講じる必要があります。

2 遺言制度の見直し
自筆証書遺言の要件が緩和されました。従前、遺言に記す財産については手書きで一つ一つ書く必要があり、書き損じなどがあれば一定の要式に従って訂正する必要があり煩雑でした。
しかし、改正法では、署名・押印をした目録を添付することで足りることになりました。パソコンなどで作った目録に署名・押印すればよいので非常に簡便になります。
また、2020年7月10日から施行となりますが、法務局が遺言書を保管してくれるようになります。これにより遺言書の紛失、隠匿、変造を防げます。
ただし、法務局が内容の有効性までチェックしてくれるわけではないので、内容の不備や作成者の意思無能力などにより無効な遺言書が保管される場合がありえます。こういった問題に対処するためにはなお公正証書遺言が有用です。

3 相続人以外の者の貢献を考慮する方策
従前、療養介護などにより、被相続人の財産の維持等に貢献した者に対しては遺産の中から優先して一定の財産が与えられていましたが、対象者は相続人に限定されていました。改正法ではこれが相続人以外の親族まで拡大されます。
例えば、長男の父を介護していた長男の妻や甥が対象に入ります。

この他にも多岐に渡る改正項目が盛り込まれています。