監査等委員会設置会社移行の現状と内部規則について

 池田 佳史

2016年10月15日

<ポイント>
◆平成28年6月総会で監査等委員会設置会社に移行した会社は前年より増加
◆監査等委員会設置会社に移行した多くの会社で取締役に重要な業務執行を委任
◆その場合には経営執行会議や常務会等の規則に工夫が必要な場合も

多数の会社が定時株主総会を開催した2016年(平成28年)6月の総会についての分析の記事が法律雑誌などで紹介されています。
その中で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行について、平成28年6月総会で監査等委員会設置会社に移行した会社は293社あり、平成27年6月総会で移行した169社よりも相当に増えています。
平成28年6月総会で移行した会社の中で63社が、監査役であった者が監査等委員にいわば横滑り的に就任し、かつ、新たな監査等委員を選任していません。これらの多くの会社では社外監査役2名がそのまま社外取締役で監査等委員に就任したものと考えられます。

監査等委員会設置会社では、取締役の過半数を社外取締役とするか、定款の定めにより、取締役会決議によって重要な業務執行の全部または一部の決定を取締役に委任することが認められています。
商事法務によるアンケート調査では、平成27年5月、6月の総会で監査等委員会設置会社に移行した86社のうち80%以上にあたる71社が取締役に重要な業務執行の委任をしているということです。
平成28年6月の総会で監査等委員会設置会社に移行した会社のデータはまだ公表されていないようですが、大きな違いはないものと思われます。
このように監査等委員会設置会社では大多数の会社が重要な業務執行を取締役に委任しているといっていいと思います。

重要な業務執行を取締役に委任する旨の取締役会決議に伴い、取締役会規則や取締役会への付議基準などの内部規則を変更することになります。
その場合、それまで取締役会決議事項として規定していたものを代表取締役の決定事項に変更することが考えられますが、経営執行会議や常務会などの監査等委員たる取締役を除いた取締役と経営上層部(執行役員などがそのメンバーとして考えられます)により構成される会議体の決定事項に変更することも考えられます。
この経営執行会議等への変更については、代表取締役の諮問機関とされる場合と決議機関とされる場合が考えられます。
代表取締役の諮問機関とされる場合であれば、代表取締役が最終的な決定をすることになるのが通常で、その場合には「取締役に委任」されていることにはかわりはなく、法律上の問題はありません。
しかし、経営執行会議が意思決議機関として規定されている場合には、法律上問題が生じる可能性があります。
たとえば、重要な業務執行について経営執行会議が多数決で決定すると規定し、取締役3名と取締役でない執行役員4名で経営執行会議が構成される場合、取締役が全員反対しても執行役員4名が賛成すれば経営執行会議は賛成多数となりえます。この場合に「取締役に委任」されているとはいえないのではないかという疑問が生じます。
実際にはそのような事態が起こることは稀でしょうが、これを回避するための方策を講じておくことは有用であり、経営執行会議規程や常務会規程などで決議には取締役1名以上の賛成を必要とする等の工夫が考えられます。