産業再生と民事再生

 片井 輝夫

2003年10月15日

【はじめに】
大手の家電量販店で大証一部上場会社のマツヤデンキは、平成15年9月25日、大阪地裁に民事再生の申立をし、翌26日には、株式会社産業再生機構が、産業再生機構法22条による支援の決定を行いました。
同社の負債総額は約650億円ということです。
再生機構が、法的整理後の企業を支援する初のケースになり、今後のモデルケースとなるのではと注目されています。

【産業再生とは】
従来、不良債権処理のために、RCC(整理回収機構)というものがあります。
RCCは金融機関の不良債権を買い取って、債務者から回収することを業務としていましたが、債権回収に力点があったために、再建可能な企業まで倒産に追い込み、結果的に、産業の再生や雇用確保に逆行するという現象が生じました。
そこで、国が産業の再生を支援しようということで、平成15年に産業再生機構法が施行されました。
産業再生制度とは、金融機関が経営に行き詰まった企業(以下、単に企業といいます)に対して有する債権を、株式会社産業再生機構が適正な価格で買い取って一本化し、メインバンクとともに企業の大口債権者となり、企業に対して必要な融資をしたり、不採算部門の縮小、営業譲渡などによって企業経営を健全化することを支援する制度です。
産業再生機構は、原則として3年以内に、自己の債権を他のスポンサーに売却したり、あるいは債権を株式化して売却することによって投下資金を回収することになります。
金融機関にとっては、産業再生機構に不良債権を買い取ってもらうことによって、不良債権処理ができ、また、企業側も大口債権者がメインバンクと企業の再建に協力してくれる産業再生機構だけになるため、再建が図り易くなります。
ただ、むやみに支援して企業が再建に失敗した場合、産業再生機構自体が行き詰まる可能性もありますので、適用には慎重とならざるを得ず、支援決定は、産業再生委員会の審査が必要です。
したがって、どんな企業でも支援を受けられるというものではありませんが、会社更正や民事再生などの再建型の倒産手続に入っている企業も、再建の可能性があれば適用されます。

【民事再生とは】
民事再生法は、従来の和議法を全面的に改正した法律であり、再建型倒産法の基本法となっているものです。
民事再生は、裁判所の監督のもとに、債務の支払を停止したうえで、債務の一部免除や長期の弁済条件などを盛り込んだ再生計画を立案して、これを債権者集会にかけて、過半数債権額の債権者の賛成がえられれば、債権を強制的にカットできるという制度です。
この民事再生手続では、担保権者(多くは金融機関)は、手続から除外されていますので、担保権者が債権回収を急ぐあまり、企業の事業用資産に対して競売申立するなどの強行手段をとった場合、企業としては再建が非常に困難になるという欠点がありす。
このような場合、企業に有力なスポンサーがついていれば、スポンサーに金融債務を肩代わりしてもらうこともできますし、また、債権者も、安心して再生会社と引き続き取引できることになり、再生も順調に推移しますが、民事再生申立時点で有力なスポンサーをつけられる例は少ないといえます。
また、数行の金融機関がある場合、各金融機関のお家の事情や利害対立などがあって、債権放棄や弁済条件の足並みが揃わず、その調整に苦労するケースが多くあります。

【産業再生と民事再生の組み合わせ】
民事再生会社が産業再生機構から支援決定を受けられますと、再生会社に本格的なスポンサーがつくまでの間、産業再生機構が暫定的なスポンサーの役割を果たしてくれますので、再生が容易になると言えます。
また、金融債務が一本化するために、弁済条件の取り決めも容易になります。
さらに、民事再生会社は、産業再生機構による支援決定の信用力によって、DIPファイナンスからの融資が受けられ易くなったり、資産売却などもスムーズに行くようになります。
この制度の組み合わせによって、企業を立ち直らせる事例が多くなることを期待したいと思います。