災害時の責任

 高橋 英伸

2018年09月15日

<ポイント>
◆常識的な備えをしなければ天災でも損害賠償のリスクあり
◆不可抗力なのかミスなのかがポイント

2018年9月5日現在、大阪は地震・暴風(台風)という大きな自然災害に見舞われました。災害で自身の身体や財物が被害を受けた場合や、自身の物が他者に損害を与えた場合、法的にはどういう問題が生じるのでしょうか。

一般に、加害者が損害賠償責任を負うのは、加害者に故意または過失がある場合に限られます。加害者に故意または過失がない場合は、自然のせいだというほかなく、自然に責任は問えないので、自身の費用負担や保険で対応することにならざるをえないでしょう。

貨物運送業で例えると、運転ミスによってトラックが横転して積荷が台無しになった場合、運送業者は荷主に対して運送契約上の賠償責任を負います。横転した車や、転がっていった荷物で第三者の財産等に損害を与えた場合は不法行為としての賠償責任も負います。

他方、暴風雨で横転した場合、基本的には誰に対しても責任を負いません。
運転手や会社に故意・過失がなく、損害が生じたのは暴風という不可抗力によるものだからです。
もっとも、責任を問える場合があります。直接的には暴風雨によって損害が生じた場合でも、事前の管理や備えが不十分だったことも要因となって損害が発生した場合です。
例えば、四半世紀ぶりという今回の台風21号については、上陸の2~3日前から歴史的強風に注意せよと天気予報・ニュースで度々流れ、結果としてあちこちで走行中・駐停車中の車が横転しました。危険が予見できる日に限って無理に営業して案の定車が横転したといえる場合は責任を問う余地があります。
他方、普段、屋外駐車場に止めていた車が暴風で横転して第三者に損害を与えた場合に、なぜロープ等で地面に固定しなかったのかと責任を問われることはありません。法は人に困難を強いるものではありません。
まとめると、天災による被害であっても、危険を予想できたのに常識的な備えをしなかったことが原因の一つとなった場合には責任が発生しうるということです。

裁判例としては、建物屋外テラスのゴミなどを放置した結果、台風の際にそれらが風や雨で移動して排水溝に詰まって水漏れ事故を起こした件につき建物所有者の責任が肯定された事例や、台風による高潮が想定されたのに港湾の上屋に放置された輸出貨物が浸水した件につき海運業者らの責任が肯定された事例などがあります。

最後に、他人のエリア(土地・建物など)に侵入した残置物については、責任の有無に関わらず元々の所有者に片付ける義務があります。しかし、屋根の破片など見るからに無価値な物なら被害者の方で捨てても問題はないでしょう(捨てられても所有者に損害がない、あるいは、所有者が所有権を放棄しているとみなせると考えることになるでしょう。)。ただし、念のため、捨てる前に移動前後の写真を撮っておく方がいいでしょう。