民法改正 個人根保証

 高橋 英伸

2020年04月01日

<ポイント>
◆個人根保証一般について極度額の定めが必須となった
◆極度額の定めのない個人根保証契約は無効
◆継続的取引・不動産取引の保証条項については必ず見直しを
◆極度額の定めは常識的に

改正後の民法の規定の多くが2020年4月1日から施行されます。
この内、個人根保証に関して解説します。

根保証とは、債権者と債務者との間の継続的な契約関係から将来にわたり発生・消滅する複数の債権を包括的に保証するものです。
例えば、(1)主債務者が銀行から借り入れる債務を保証する場合(当座貸越契約など)、(2)継続的な取引により生じる売掛金を保証する場合、(3)不動産賃借人の債務一般を保証する場合などです。
他方、分割払いとなる100万円の売買代金債務の保証などは特定された債務の保証であり、根保証ではありません。

改正前民法では、主債務に金銭の貸し渡しや手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれる「個人貸金等根保証契約」についてのみ極度額(限度額)の定めが必要でしたが、改正後民法では、個人根保証一般について極度額の定めが必要となりました(民法465条の2第1項)。極度額は、元本だけでなく、利息、違約金、損害賠償その他の主債務に従たる全てのものを含めた額となります。
そして、書面(または電磁的記録(ワード、PDFなど))による極度額の定めがない契約は無効です(同第2項、3項)。
なお、保証人が法人の場合には上記の適用はありません。

上記(1)については、平成16年の民法改正によって極度額の定めが必須となっており、実務上も当然に極度額の定めがされています。他方、上記(2)、(3)など「個人貸金等根保証契約」以外の契約については極度額の定めがない契約が多かったため、実務への影響は大といえます。改正を知らずに極度額の定めをしなかった保証契約は無効となるため、保証人がいない契約となってしまいます。契約更新時に極度額の定めをせずに無効となる契約も出てくるでしょう。
以上より、今後、締結・更新する継続的取引、不動産取引の保証については、契約条項の見直しが必須といえます。簡単に見直すなら、保証条項の本文に「極度額○○円の範囲で」と加えるだけで足ります。

極度額の定めをするにしてもその定め方や額について法律は何も定めていません。
そこで、例えば「賃料の○ヶ月分」というような算定方法を定めるやり方も理論上はありえますが、有効な極度額の定めと評価されないおそれがあるので、具体的な金額を定める方が無難といえます。
また、せいぜい数百万円の取引なのに「極度額1億円の範囲で」と定めるのも、上限が存在しないのと同じであるから極度額の定めがないと評価されるおそれがあります。取引の実情に応じて、保証人にとって過酷とならないよう常識的な額の定めが必要となります。

最後に、保証に関する改正後民法は2020年4月1日以降に締結される保証契約に適用されます。これより前の保証契約については従来の民法が適用されますので、極度額の定めがなくとも有効です。ただし、更新については前述のとおり注意して下さい。