死亡保険金と相続財産

 木ノ島 雄介

2014年05月01日

<ポイント>
◆相続財産となるかは保険金受取人が誰なのかによる
◆相続財産でなければ相続放棄しても受け取れる

先日法律相談を受けていましたら、死亡保険金が相続財産にあたるのか立て続けに聞かれましたので、本稿で取り上げてみたいと思います。
死亡保険金が相続財産にあたるかは、遺産分割や相続放棄の際に問題となります。相続財産にあたらなければ、受取人に指定されている相続人が保険金を受け取ったからといって基本的には遺産分割に影響しません。また、相続放棄をしてもなお保険金を受け取れることになります。

たとえば、ある男性が自らを被保険者として生命保険契約を結ぶにあたり、特定の第三者、たとえば妻を死亡保険金受取人として指定していることが多いと考えられます。この場合、保険金請求権ははじめから妻に帰属することになります。妻固有の財産であり、ある男性が死亡しても相続財産にはなりません。
また、死亡保険金受取人が「法定相続人」と定められている場合も、同じようにはじめから法定相続人(たとえば妻と子2人)の固有財産となります。相続財産にはなりません。養老保険契約について最高裁が昭和40年2月2日にこのような判断を行っており、他の生命保険契約についても当てはまると考えられます。養老保険契約とは、一定期間満了前に被保険者が死亡すれば死亡保険金が支払われ、死亡することなく一定期間が満了すれば満期保険金が支払われる保険契約です。

以上のように、死亡保険金受取人として特定の第三者が具体的に指定されていても、「法定相続人」と抽象的に指定されていても、死亡保険金は相続財産にはあたりません。したがって、論理的には相続放棄をしても保険金請求権は失わないことになります。
自動車保険における自損事故保険・搭乗者傷害保険の死亡保険金受取人が約款で「法定相続人」と指定されていたが法定相続人全員が放棄したという事案において、裁判所は、法定相続人は保険金請求権を失わないと判断しています(平成16年12月9日 大阪地裁 判決、平成21年1月30日 盛岡地裁 判決など)。自損事故保険とは、単独事故などを起こして死亡したり傷害を負ったりした場合に約款で定められた定額が支払われる保険であり、搭乗者傷害保険とは、車の運転者や同乗者が死亡したり傷害を負ったりした時に約款で定められた定額が支払われる保険です。
なお、指定された「法定相続人」が数人いるときは、各相続人が請求できる保険金の割合は、相続人の頭割で決めるのではなく相続分割合に従って決めると考えられます。積立女性保険(生命保険の一種)において最高裁も平成6年7月18日にこのような判断をしています。死亡保険金受取人を「相続人」と指定する際の契約者の意思は、自らの死亡時の相続人にその相続分割合に従って保険金を取得させるというものであると考えられるからです。

死亡保険金が相続財産にあたるとすれば、今日ではそれほど多くないと考えられますが、たとえばある男性が自らを被保険者、死亡保険金受取人として保険契約を結んだ場合です。この場合に男性が亡くなると、保険金請求権は相続財産となります。したがって、相続放棄をすれば保険金請求権を失うことになります。

保険金と相続の関係は複雑で、場合によっては約款を確認する必要もありますので、保険がどうなるのか迷われたら弁護士に相談することをお勧めします。