株主提案権の今後について

 池田 佳史

2018年02月01日

<ポイント>
◆株主提案権の行使制限が検討されている
◆株主提案がされた場合に会社提案との競合の有無の検討が必要

今年(2018年)1月15日の日経新聞の記事によると、1人の株主が株主提案権の行使により株主総会で提案できる議案数を最大10に制限することを含む会社法改正の試案が明らかになったとのことです。
資料版商事法務によると、2016年7月から2017年6月までの株主総会において株主提案が付議された上場会社数は51社で年々増加傾向にあるということです。なお、以下の記述は上場会社を念頭においています。
株主提案権とは、総株主の議決権の100分の1または300個の議決権(通常の100株を単元株とする会社では3万株)以上の議決権を6ヶ月前から有する株主が、株主総会に付議するよう提案できる権利です。
この権利を行使するためには上記の議決権を有することに加えて、株主総会の8週間前までに行使する必要があります。
ただし、議案の内容が法令定款に違反する場合、以前に議決件の10%以上の賛成を得られずに否決されて3年を経過していない案と実質的に同一である場合には株主提案権の行使はできません。
株主提案権を行使できる場合には提案した案の要領を株主に通知することを求めることができ、上記株主提案を受けた上記会社の招集通知には株主提案の内容も記載されています。

実際に行われた株主提案の内容については種々ありますがおおまかにいって、剰余金処分議案、役員選・解任議案、定款変更(特定の主義主張によるものを含む)議案などです。
株主提案には会社提案と競合し、一方が賛成になると他方は反対になることも多くあります。たとえば、取締役の選任議案において双方が定款に定める員数の上限数の異なる候補者を提案する場合です。
このような場合、株主が双方に賛成の議決権行使をした場合にいずれの議案の議決権行使も無効となります。
このような事態を防止するため、会社としては招集通知に注意喚起のためにその旨を記載する例が多いようです。
他方で、定款に定める員数より少ない数の取締役選任の会社提案に対して、取締役1名の株主提案をする場合には競合しないことになります。この実例である黒田電気株式会社の2017年6月の定時総会でも競合するものとはしていません。
剰余金処分案の場合には競合議案になるかどうかについては個々のケースで判断することになります。たとえば会社提案1株1円の配当議案に対して株主提案1株10円の配当議案は競合議案と解釈することが多いと思います。
これに対して会社提案1株13円の配当議案に対して株主提案1株43.5円の追加配当議案は競合議案とはなりません。この実例である日産車体株式会社の2017年6月定時総会でも競合議案としていません。なお、この提案は否決されたものの賛成率は23.5%あったということです。

上記株主提案で可決されたのは2議案だけですが、否決されてはいても相当な得票をしている議案もあります。特に上記のような追加配当議案については、今後も株主提案が行われて一定の賛成を得る可能性はあります
冒頭の日経新聞の記事は、わが国の会社法は株主提案権の行使により提案できる議案数を制限しておらず諸外国に比べて緩いことが理由の一つです。
しかし、仮に会社法改正により株主提案数を制限するとしても実務が株主提案権の行使を抑制する方向に進むわけではなく、経営陣は株主提案権の行使があることをより意識する必要があります。