最高裁大法廷が非嫡出子の相続分制度について近く判断

 片井 輝夫

2010年09月01日

本年(2010年)7月7日、最高裁第3小法廷は、「嫡出でない子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とする。」との民法第900条4号の規定に従ってなされた遺産分割審判が違憲だとして特別抗告された事件を、大法廷に回付しました。

最高裁には、15名の裁判官がいます。この15名の裁判官全員で構成される合議体を大法廷といいます。また、最高裁には、大法廷とは別に、5人で構成される第1から第3小法廷という3つの合議体があります。大法廷も小法廷も同じ最高裁判所であり、大法廷が小法廷の上位にあるわけではありません。最高裁の15名の裁判官は、3つの小法廷のどれかの構成員でもあります。最高裁に上告されてくる事件をすべて15名の裁判官の合議体で処理するのは大変ですから、通常は小法廷で判決がなされます。しかし、憲法判断や過去の判例変更など重要な判断事項を含む事件は、小法廷では裁判できないと定められています(裁判所法第10条)。

ところで、この非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1に制限している民法規定については、平成7年7月5日に、最高裁大法廷で合憲であるとの判決が一度なされています。しかし、この平成7年判決は、裁判官全員一致ではありませんでした。15名の裁判官のうち10名が合憲と判断しましたが、残り5名の裁判官は違憲との判断でした。合憲であるとする多数意見は、「民法は法律婚主義を採用しているのであるから、法律婚から生まれた嫡出子を保護するのも、合理的な根拠がある。」というものです。違憲とした反対意見の主な理由は、「出生について何の責任も負わない非嫡出子をそのことを理由に法律上差別することは、婚姻の尊重・保護という立法目的の枠を超えるものであって合理性がなく、憲法14条に定める法の下の平等に反する。」というものです。

このように、平成7年の合憲判決は、10対5で結論が分かれる判決であったうえに、その後の最高裁小法廷による合憲判決になんども反対意見がつくなど、いつ覆ってもおかしくないという状況といえます。今回の大法廷への回付は、おそらく担当となった第3小法廷の5人の裁判官のうち3人以上の裁判官が、民法900条4号の規定は違憲であるとの結論に至ったことから、裁判所法第10条の規定により、小法廷では判決ができないため、15人構成の大法廷に事件を回付することになったものと思われます。

もちろん、この事件でも、大法廷の15人の裁判官のうち8名以上が再度合憲という意見になると平成7年の大法廷判決は覆りませんので、大法廷に回付されたからといって違憲判断が確定的となったわけではありません。しかし、先の大法廷判決は5名もの反対意見があり、多数意見には論理的整合性に欠けるきらいもあります。その後も、根強く違憲とする反対意見が続いています。また、今回第3小法廷の過半数が違憲として判例変更すべきとの判断に至った可能性が高いことや、嫡出子と非嫡出子の相続分を平等とすることは世界的なすう勢となっており、この制度を廃止すべしとする法制審議会の答申も出ていることなどを総合的に判断すると、判例変更の条件が整ってきています。

ところが、違憲判決をするには大きな問題があります。それは、この民法規定がいつから違憲になったことにするのかという問題です。現行憲法施行のときから違憲であったとした場合、過去に行われたすべての遺産分割の協議あるいは審判の効力が争われることになりかねません。これは、法的安定性を欠くことですし、相当混乱が生じる可能性があります。つい最近に違憲になったというのも理屈が通らないことになります。この問題は、最高裁としては、非常に頭の痛い問題なのです。最高裁は、平成7年判決以降の小法廷の判決の中で、民法の規定は違憲の疑いが強いが、違憲と判断すると法的な混乱が生じるので、立法的に解決すべきだというような補足意見をつけたこともあります。最高裁としては、立法で期限を決めてこの民法規定を廃止してくれるのが最も望ましいのですが、少なくとも現時点では実現していません。
さて、最高裁大法廷は、これをどう裁くのでしょうか?